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東京離島のロングライフデザイン1 利島の椿油 神代椿
d design travel 特別号 東京離島より
編集長が行く
ナガオカトラベル
今の若い人たちはデザインを自分の行動の判断ポイントにしています。例えば空港や観光案内所に置いてある小さなパンフレットからも、その会社や都道府県のセンスを読み取り、興味の入り口を作り出す。この「d」という新聞は『d design travel』というデザイン目線を重視した観光ガイドを普段作っている編集部による東京の島特別号。そして、私、ナガオカケンメイが同じく編集長として島々をデザインの視点で旅をしてきました。
利島の外周は約8キロ、標高508メートルの宮塚山を中心にした火山島で、約8割は藪椿に覆われている。島全体が斜面で、比較的なだらかな島の北側に約310人が暮らしている。
竹芝桟橋から利島までは、高速ジェット船で大島を経由し約2時間20分。そのほか、島へのアクセスは、大型船やヘリが行き交う。
左が利島村役場の荻野了さん、右は東京島しょ農業協同組合(JA)の加藤大樹さん。二人とも埼玉からの移住者。
東京都には11の島があるということは知ってはいましたが、その一つ一つがこれほど個性を持っているとは考えてもみませんでした。その一つ、利島を紹介します。竹芝桟橋から高速船で約2時間20分。島に行き慣れていない僕にとって、すでにこの船旅がとても新鮮でした。島民は約310人。20代から40代の約8割が移住者。とは言え島にはコンビニはもちろん、大型の宿泊施設もありません。最大の特徴は20万本もの椿の島。椿といえば隣の大島や長崎の五島列島を思い浮かべるでしょうけれど、日本一、二の生産量を争うのはこの利島。僕は「島民の約半数がIターン」と言われ、イルカに会える以外、ほぼ椿しかないこの島になぜ、特に若い移住者が多いのか、そして、今や世界から最上級品の天然油としての椿油を買い付けに来るその様子に興味が湧くのでした。移住者を惹き付ける魅力とは何なのでしょう。
雑草があると椿の木から自然に落ちる種が隠れてしまうため、6月~ 9月の間に雑草を刈り集めて燃やす「下っ払い」という作業を行なう。
利島で一番印象に残り、また来たいと思った体験、それは椿の実を収穫する時に重要となる作業の一つ「下っ払い(したっぱらい)」と呼ばれる落ち葉や下草を掃き掃除する作業。集めた落ち葉はその場で燃やし、規則正しく人によって植えられた椿の森に、幻想的な風景を作り出します。そしてこの「下っ払い」体験を勧めてくれたのはJA利島の加藤大樹さんと利島村役場の荻野了さん。この島でも例外なく住民の高齢化が進むなか、JA利島が椿山を管理し、生産量や遊休農地の把握に取り組むほか、作業の効率化や繁忙期に島外からボランティアを募るなど様々な企画を行ないながら椿の生産に取り組んでいました。二人を通じて椿を感じ、その世話ができることで、なんだか利島自体がきれいになっていくような感じがとても好きになりました。
約20万本の椿が島の8割を占める利島。樹木に程よい光がさし、落ちた種が雨などで流されないようにと、段々畑になっている。
JA 利島では、実の大きさや、数の多さ、搾油率の良さ、皮脂に近いオレイン酸の含有率が高い木を母樹とし、良苗を育てている。
加藤さんも荻野さんも移住組。二人とも半ば不便な島暮らしにいわゆる憧れを抱いてきたのではなく、どこかなんとなく引っ越ししてきた感じ。その体験からか、島に来たいと思う人にはあえて必要以上にいわゆる離島暮らしの夢のような話はしないという。その理由は都会のように「仕事と生活」を分ける暮らしはこの島にはなく、約310人の島民と暮らしていけるのかが、とても大切なことになる。二人とも、都会の多忙さから逃げてここに来た訳ではないから、その「暮らし」という言葉にはとても重みがありました。そして、それはとても温かく僕には感じられ、どんどん利島が好きになりました。
椿油のイメージを じっくり進化させていく。
JAの加藤さんも村役場の荻野さんも、口を揃えて島に椿の木を植えた島民の先駆者たちを尊敬していました。それがこの島に住み暮らす様々なことを作っている。人々の距離感や温かみ、一緒に暮らし続けるために、複数の仕事をこなす生き抜く工夫と力強さ。その基礎とも言えるようにどっしりと椿がある。そのシンプルさが利島の最大の魅力なのではと僕は感じました。聞いてびっくりした「島民の家には表札がない」ということが、なんだか物語っているように僕には思えました。
毎年11月頃から4月上旬までが開花時期。花が地面に落ちはじめると、ピンク色の絨毯が敷かれたような景色が広がる。
椿油と言えば少し茶色で香りも特徴的。髪などに塗るとツヤが出る。そんな先人が開拓したこの自然の恵みを、時代の様々な変化に対して進化させていました。例えば世界的にとても厳しい基準のオーガニック認証である「コスモス認証」に挑み承認を得たり、これまで椿油の大きな特徴であった色を無色透明にしたり……。こうした島民の価値観を進化させることでもある試みには、おそらく色々な意見が交わされたと想像できます。しかし、昔と比べ日本が世界と繋がり、そして健康や自然環境への高い関心は、人類により無理のない天然由来の素晴らしいものを求めさせ、そして日本の小さな小さな椿の島、利島に世界の関心が集まってきていました。それは薬品などに頼らず、そして急がず、出来るだけ自然な状態で上質なものを作ってきた利島の椿に対する考えが、高く評価されてのこと。その声に応えながら、最高にピュアな「オーガニックオイル」は作られていました。そして初めてこの島に来た僕が少しだけお手伝いした、椿の種が自然に落ちてくるのを待ち、落ちた時に収穫しやすいように準備する「下たっ払らい」という素朴で無理のない工程の様子に、なんだかとてつもなく島の人たちの心を感じたのでした。
実が熟す初夏から秋にかけて次第に種子に油を含むようになり、9月頃から実が弾けて種が自然落下する。
9月~ 2月頃、自然落下した種を一つ一つ手拾いする「取りっ拾い(とりっぴろい)」作業。代々受け継いだ畑を守りつつも、椿農家が高齢化し、担い手が減っているのも課題のひとつ。
今、利島の椿油は国内生産量で日本一、二を争います。そして加藤さん、荻野さん、多くの椿生産者の皆さんによって世界的にも最上級ブランドとなりつつあり、その努力は今日もきっと続いていることでしょう。日本では化粧品に関して、国が管理・監督するオーガニック認証がまだありません。しかしきっと将来、利島の取り組みから、しっかりとした世界に通ずる認証制度が生まれ、生産量の約90パーセント以上が化粧品に使われている椿油が、将来的には人類が自然と共に作り出す最高品質の「オイル」として様々な分野に使われていくと強く感じました。
島を離れる日。売店のおじさんまでが見送りに来てくれました。同じ東京に暮らす人同士が、ここに来ると心も気持ちもどこか椿のようにピュアになれるように思い、また加藤さんや荻野さんを慕って、東京の島、利島に下っ払いを手伝いに必ず来ようと思うのでした。こんな小さな島で世界が注目するものを作っていた。素晴らしい旅でした。
ナガオカケンメイ
デザイン活動家。D&DEPARTMENTディレクター。すでに世の中に生まれたロングライフデザインから、これからのデザインのあり方を探り続ける。日本初の地域デザインミュージアム「d47 MUSEUM」を発案、館長。 2013年毎日デザイン賞受賞。
椿油のつくりかた
1.下っ払い
夏の間に下草を刈り、茶色く小さな椿の種を拾いやすくする作業
2.取りっ拾い
9月中旬から2月中旬の間に自然に落下した椿の種を収穫する
3.乾燥
農家ごとの袋の状態で並べ、50°~60°の温度で約8時間乾燥させる
4.選別
風力選別機で石や葉、ゴミなどを取り除き、種だけを選別する
5.搾油
椿の種を50°~60°で1~2時間温め、搾油機で種を圧縮し搾油する
6.脱酸
酸化の原因になる遊離脂肪酸を苛性ソーダを使って石けんにし、取り除く
7.ゆたたき(脱水)
椿油に含まれる水分を取り除くことでさらに酸化値を下げる
8.脱色・脱臭
活性炭と活性白土に色を吸着させ脱色し、水蒸気で脱臭処理する(「神代椿- 銀-」のみ)
9.最終のゴミの除去
精製された椿油を網目1ミクロンの和紙で濾し細かなゴミを除去する
10.充填
製品としてボトルに充填。利島の椿油は精油から製造までを行う
期間限定発売
利島の椿油「神代椿」
ネットショップ発売期間:2020/12/31 まで
トラベルガイドでご紹介した、利島の椿油「神代椿(かみよつばき)」を、ネットショップと一部店舗にて、期間限定で発売。髪、顔、全身に、お子様からご高齢の方まで安心してお使いいただけます。
【予約販売】神代椿 -雫-(30ml)
日本で初めてオーガニックコスメの世界統一基準「COSMOS ORGANIC」認証を取得した、利島のツバキ種子油を100%使用。
¥5,000
(2020/12 販売は終了いたしました)
神代椿 -金-(50ml)
利島産完熟ヤブツバキ種子の一番搾り油のみを使ったオーガニックオイルです。椿油の色、香りを自然のままに残しました。
¥2,000
(2020/12 販売は終了いたしました)
神代椿 -銀-(50ml)
「神代椿-金 -」に脱色・脱臭を施して、サラリとした質感に精製した無色透明のオイルです。香りや色が気になるという方も使いやすい。
¥2,000
(2020/12 販売は終了いたしました)
オンラインで、店頭で
体験してください
東京離島のものづくりを体感する
利島の椿油「神代椿」の期間限定販売会
期間:11/26(木)~12月末まで (※年末の営業日程は店舗によって異なります)
開催店舗:d47 design travel store / D&DEPARTMENT TOKYO / D&DEPARTMENT KAGOSHIMA by MARUYA
日本一、二の生産量を誇る椿の産地「利島」で生まれた椿油「神代椿」の使い心地を実際に店頭でお試しいただける期間限定販売会を開催します。期間中は、商品の購入はもちろん、島の産品の魅力を語るオンライントークイベントも配信。東京にある離島のものづくりや自然や文化などを、ロングライフデザインの視点で考え、ご紹介します。
JA利島 加藤大樹さんに聞く
島の暮らしと椿油の魅力
ライブ配信日時:11/28(土) 11:00~12:00
無料配信オンライントーク。ナガオカケンメイが聞き手となり、東京島しょ農業協同組合 利島店(JA利島)の加藤大樹さんをゲストに、利島の椿油の産業や現状、製法や効能などについてお話を伺います。ライブ配信日以降は、見逃し配信でいつでも視聴可能です。

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東京にある離島のものづくりと観光を、
ロングライフデザインの視点で考えます。
その土地に長く続く「個性」「らしさ」を、デザイン的観点から選びだし紹介する観光ガイドブック d design travel編集部による『d design travel 特別号 東京離島 TOKYO ISLANDS』を作成しました。

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