旅を自宅に。 SAGA TRIP PACK - TRIP.1

その土地に長く続く「個性」「らしさ」を、デザイン的観点で選び出し紹介する観光ガイドブック『d design travel』編集部が、佐賀の名産品の中から“佐賀らしさ”を感じる8つの商品を厳選。特別編集号のトラベルガイドを読み、選んだギフトを味わいながら、産地を訪ねるオンライン体験で、その土地の風景を体感する。新しい観光スタイルの旅を、ご自宅にお届けします。

有明海・武雄・嬉野・有田エリア

九州佐賀国際空港から続く広大な佐賀平野。
海苔畑から茶畑まで、佐賀ならではの農業の今。
シュガーロード、温泉、そして、九州焼物文化の旅の始まり。

  • 三福海苔株式会社
  • 旬菜台所 あ・うん
  • ティーツーリズム
  • むら雲堂
  • 村岡総本舗 本店
  • 八頭司伝吉本舗
    本店
  • 旅館 大村屋
  • 今村製陶 町屋
  • 佐賀県立
    九州陶磁文化館
  • 武雄温泉 元湯

佐賀のデザイントラベル

九州の北西部に位置する佐賀県は、大きく5つのエリアに分けられる。佐賀市を中心とした「中部」、有田や伊万里などの焼物産地「西部」、唐津や玄界灘に面する「北部」、武雄や嬉野の温泉地「南部」、そして鳥栖や吉野ヶ里の「東部」。中部から東部にかけては、干拓によって形成された「佐賀平野」が広がり、「クリーク」という水路を利用した水田が多い。

また、佐賀平野は、二毛作を行なっているのも特徴で、稲刈りと麦の種まきの間、ちょうど11月の頭、農地が空いている時には、「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」が開催される。世界中から集まった100機を超えるカラフルなバルーンが、佐賀平野の広大な空に浮かぶ様子は、まるで夢の国のよう。そんな佐賀県ならではの土地で生まれ、今も続くさまざまな〝ロングライフデザイン〞。各地の作り手を訪ね、〝佐賀〞を感じる旅―『d design travel SAGA』番外編。3日間にわたって、県内を巡っていこう。

僕たちを乗せた飛行機は、九州佐賀国際空港へ、着陸に向けて、大きく右へ旋回する。窓には九州最大の湾・有明海が映る。日本一の遠浅の干潟は、最も大きいところで約6メートルもの干満の差があり、その固有の環境を活かした有明海の海苔の養殖。11月の収穫に向けて、漁師たちは海に約200万本の支柱を立て、それに沿うように帯状の網を仕掛けていく。約30万棚の海苔畑。この風景こそ、佐賀ならではのデザインだ。

三福海苔株式会社
佐賀県佐賀市川副町犬井道 1672
0952-45-0039

1971年創業の佐賀海苔専門店。有明海まで車で約3分の近さの工場直売店「のり道楽」には、焼海苔、味付海苔、海苔のふりかけや海苔煎餅まで、さまざまな商品が並ぶ。佐賀の山々から流れる恵みの水で育った、海苔とよく合う米や珍味も厳選して販売。多彩な佐賀海苔が買えて、その楽しみ方を教えてくれるお店。

有明海の畑

海苔というと、言わずもがな有明海産。事実、佐賀県は日本一の海苔の産地である。しかし、意外と知られていないのが、その理由。有明海は、佐賀・長崎・熊本・福岡の4県に囲まれる内海。津波などの自然災害が少なく、一年中穏やかな海は、環境面で養殖に適しているという。さらに、海苔の成長に欠かせない森の栄養分が、筑後川などによって山から運ばれる。そして、満潮時には、真水と海水が混ざり合い吸収、干潮時には、太陽の光を浴びて成長する。適度な潮流と広大な干潟―これらが日本一の〝海の畑〞ともいわれる所以に他ならないのだ。県内の生産量の約割の佐賀市。1971年創業の海苔専門店「三福海苔」で、お土産に海苔を選ぶ。ギフトには、「初摘み美香舞」や「香味干し」、ご家庭には、「佐賀有明ちょい海苔」など、おつまみにもよい。

せっかくならば、佐賀の海苔を肴に、地酒をいただこうと、酒場を訪ねる。役者やデザイナー、アーティストなどが集う、文化的な居酒屋「旬菜台所 あ・うん」で、生海苔をいただく。収穫が始まった頃だけに食べられる希少な海苔は、味わったことがないほどに絶品。無論、酒が進む。〆は、お母さんの愛情たっぷりの佐賀米のおむすび。これこそ最も美味しい海苔の食べ方だろう。そして、吞み足りなければ、〝甘い〞〝すっぱい〞〝からい〞と、独特の注文方式を採用する地酒専門「傳庵」で、はしご。小上がりにある囲炉裏で炙って食べる焼き海苔も、またうまい。

旬菜台所 あ・うん
佐賀県佐賀市中央本町2-1
0952-27-1567

常連客や旅人、佐賀を訪れるクリエイターなどが集まる料理店。料理はどれも、佐賀のものを主に大切に集めてきたという古陶磁や現代作家の器を惜しげもなく使って、目の前で、鮮やかに盛りつけて出してくれる。「東一」「鍋島」「天山」など、佐賀県の地酒と美味しい家庭料理を、家族が集う実家のように、気楽に楽しめる店。

有明海の恵みをいただく
「佐賀海苔おむすび」セット
¥5,270(税・送料込)

d design travel 編集部が自信を持っておすすめする佐賀の美味しい手みやげ「三福海苔」の多彩な佐賀海苔商品の中から、海苔の匠と米の匠が選び抜いた、自然の恵みがそのまま味わえる佐賀県産の海苔、ふりかけ、お米を詰め合わせたオリジナルセットです。特別なミニボトルに詰めた、加唐島の自然塩「一の塩」を添えてお届けします。

「旬菜台所あ・うん」店主 中林典子さんに教わる
美味しいおむすび講座

三福海苔の川原常宏さんに佐賀海苔の美味しい味わい方を、「旬菜台所あ・うん」の中林典子さんに、美味しいおむすびの作り方とご飯に合う一品料理を教えていただきます。

ライブ配信日時:2020年12月12日 18:00-19:00
(ライブ配信日以降は見逃し配信でいつでも視聴できます)

茶・温泉・焼物の共演

砂糖文化を運んだ長崎街道、別名「シュガーロード」。江戸時代、ヨーロッパとの窓口であった長崎から小倉にかけて、街道沿いでは菓子が発展し、「小城羊羹」も現代に伝わる佐賀の銘菓として愛されている。

むら雲堂
佐賀県小城市小城町蛭子町441-1
0952-72-2966

明治30年後期に創業。大納言小豆粒餡の「むら雲羊羹」は、自家製餡のしっかりとした小豆の味わいと甘さ、もっちりした歯ごたえが楽しめる。

村岡総本舗 本店
佐賀県小城市小城町861
0952-72-2131

明治32年創業。“原料に優る技術なし”をモットーに、原材料を厳選。こし餡の羊羹「本煉」は、羊羹本来の味を味わうことができる。

八頭司伝吉本舗 本店
佐賀県小城市小城町152-17
0952-73-2355

大正10年創業。羊羹の個性を小城の山々と四季の移ろいに見立てた「つれづれ」は、和三盆を使用した品のよい甘さが特徴。

その道を遡るように、「武雄温泉元湯」へ。唐津出身の辰野金吾設計の「楼門」と「新館」は、国の重要文化財にも指定されており、見学もできる。同じく佐賀を代表する温泉地・嬉野へ温泉のはしご。宿泊は、吉村順三設計の旅館「大正屋」もいいが、自由素敵な「旅館 大村屋」へ。嬉野川を望む貸切風呂や、名物「温泉湯どうふ」はもちろん、『湯上り文庫』『おひるね諸島』『ローカル大会議』など、さまざまな活動がある。

武雄温泉 元湯
佐賀県武雄市武雄町大字武雄7425
0954-23-2001

明治9年に建築。現在使用されている木造建築の共同浴場としては日本最古のもの。「あつ湯」と「ぬる湯」の2種類の湯船があり、営業時間は朝6時半から深夜0時まで。約1300年前の開湯以来、観光客や地元の常連客が集まり、語り合う、武雄温泉を愛する人たちのコミュニティーとして機能している温泉。

旅館 大村屋
佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙848
0954-43-1234

1830年創業、一五代目の北川健太さんは、受け継いだ古い旅館の味わい深いデザインはそのまま残しながら、気鋭の家具工房「bookMt.」で作ったオリジナルの椅子を置いたり、嬉野温泉の暮らしや日常をブログで紹介して宿泊客にもその魅力を伝えたりと、地域の橋渡し役として、温泉街を盛り上げている。

さて、嬉野といえば、茶処でもあり、焼物の産地でもある。そんな類のない土地で取り組まれている「ティーツーリズム」について、「旅館 大村屋」の代表・北川健太さんに話を伺う。そもそも嬉野のお茶の歴史は、約500年。西日本有数の産地として知られ、品評会でも日本一を受賞するほど。「ティーツーリズム」は、〝一杯のお茶を求めて旅をする〞をコンセプトに、「茶話」「茶輪」「茶泊」など、「茶師」と呼ばれる7名の茶農家と、嬉野茶にまつわる体験メニューを展開。特筆すべきは、茶畑にできた「茶室」(茶畑以外のも含め、計4つ)でのお茶会。温泉街や大村湾を望み、オリジナルの「肥前吉田焼」の器で味わう嬉野茶。嬉野に滞在中のゲストに、茶師が付き添う「茶泊」も、嬉野温泉ならではの宿泊体験。

ティーツーリズム
嬉野市
tea-tourism.com

1300年前から湧出する「嬉野温泉」、500年前より栽培が始まった「嬉野茶」、400年の歴史をもつ「肥前吉田焼」の3つの歴史的伝統文化を繫ぐ、体験プログラム。茶畑に点在する嬉野の茶を愉しむ空間を巡る「茶空間体験」では、茶師が淹れる茶を茶畑の中でいただく格別なひとときを体験できる。

嬉野茶と小城羊羹3種の
味比べセット
¥2,938(税・送料込)

「嬉野茶」「肥前吉田焼」「温泉」の3つの文化を軸に、嬉野に息づく伝統を時代に合わせた新しい切り口で提案する「嬉野茶時」から、7人の茶農家が各々収穫した新茶の中で、一番の自信作を持ち寄りブレンドした「煎茶」と、d design travel 編集部が厳選した小城羊羹3品を組み合わせた、味比べが楽しいセットです。

旅館 大村屋 北川健太さんに聞く
佐賀の日常、佐賀の魅力

地域に根づく町の魅力を発掘・発信している「旅館 大村屋」の一五代目 北川健太さんに、嬉野茶、小城羊羹、その土地の人々の暮らしなど、リアルな佐賀の今、楽しみ方についてお話を伺います。

ライブ配信日時:2020年11月20日 19:30-20:30、 2021年1月29日 19:30-20:30
(ライブ配信日以降は見逃し配信でいつでも視聴できます)

やさしい白

白磁に青で柄が施された「陶山神社」の鳥居をくぐり、九州の焼物の歴史に思いを馳せる。16世紀末、「唐津焼」に始まり、豊臣秀吉の朝鮮出兵の後、九州各地に焼物の技術が伝わり、17世紀初めには、有田郷を中心に日本で最初の磁器が誕生した。そうした歴史は、「佐賀県立 九州陶磁文化館」で、無料で知ることができる。有田焼のタイルに覆われたシンプルな建築と、わかりやすい図解、そして、有田焼を約1000点展示した「柴田夫妻コレクション」も見応え十分。また、1894年に、深川忠次によって設立された窯元「深川製磁」。透明感のある白磁に「フカガワブルー」とも評された、いつ見ても美しい青の染付は、「チャイナ・オン・ザ・パーク忠次舘」で。

佐賀県立 九州陶磁文化館
佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1
0955-43-3681

佐賀県の、また、九州や沖縄各地の、庶民の器から名品までを大切に保管し、惜しげもなく公開。陶器と磁器の違いや、染付や象嵌などといった加飾法など、焼物の知識・技法・歴史を、パネルや実物の焼物でわかりやすく紹介している。焼物を基本のキから学べる場所。

有田焼の魅力は、絵付けの技術はもちろんのこと、特有の「白さ」だと思う。青白い器を焼くために、通常は度に耐え得る陶土を使う。しかし、その原料を採掘するために、より耐火度の低い陶石が大量に残ってしまう。そこで、「1240度で焼ける陶土」を、独自にブレンドして作り上げたのが、「今村製陶 町屋」の『JICON』シリーズ。デザイナー大治将典さんによるモダンな器たちは、菊皿や六角瓶など、伝統的な形も継承している。何よりも、温かみのある柔らかい〝生成りの白〞。鹿児島県の「すすむ屋茶店」のオリジナル土瓶は、富山県の「FUTAGAMI」の真鍮とコラボレーション。今の生活者たちに融け込む、これからの有田焼だ。

今村製陶 町屋
佐賀県西松浦郡有田町岩谷川内2-4-13
0955-43-4363

代表の今村肇さんが、デザイナー大治将典さんと二人三脚で生み出した「JICON」の直売店。「今右衛門」「香蘭社」「深川製磁」などが軒を連ねるメインストリートにあり、町並みに融け込む町屋建築の店の奥には、小さな窯がある工房を併設。つくり手から直接手渡されるように買える、産地の今を伝えるお店。

産地の技術を体感する
「JICON」菊皿2枚組
¥4,983(税・送料込)

暮らしに取り入れやすいシンプルなデザインと機能性、温かみのある柔らかい“生成りの白”が味わい深い「JICON」シリーズ。古くからある割烹用の皿の伝統的な形を継承し、使いやすいサイズに生まれ変わった菊皿2枚組に、お香を立てて使えるよう穴を開けた、作陶過程で使用する窯道具「ハマ」を添えてお届けします。

今村製陶 今村肇さんに聞く
今を生きるものづくり

今村製陶 今村肇さん、麻希さんに、「JICON」誕生の経緯や開発秘話を、産地の現状、工房や製造工程、直売店「今村製陶 町屋」の様子も交えながらお話を伺います。

ライブ配信日時:2020年12月19日 15:00-16:00
(ライブ配信日以降は見逃し配信でいつでも視聴できます)