D&DEPARTMENTで発刊しているd design travel 埼玉号 の表紙になった和紙の作品を制作した森田千晶さん。毎年2月ごろに和紙の原材料である楮やミツマタを採取し和紙として使用する部分のみに取り分ける作業である「かしき」を人手を集めて行っているということなので、今年は埼玉店のスタッフで「かしき」を学ぶため、参加し手伝ってきました。
森田さんはご自身のアトリエの脇の空き地にて楮の木を栽培しています。楮は画像のようにぐんと伸びた枝を根本から切断します。こんなに切って大丈夫なのかと心配になりますが、また来年には同じくらいに枝が伸びてくるそうです。
カットした枝を煮蒸すためにさらに90センチ毎にカットします。
そしてまとまったら枝先と根元側の向きを揃え大きな寸胴鍋に入れて約2時間煮蒸していきます。
2時間後、楮の枝の頭を見ていると芯の部分が1センチほど出ているのがわかります。蒸したてホカホカの楮を鍋から出し、ずれて出てきていた芯と外側の部分を分けていきます。
枝の根元側の太い方から皮に亀裂を入れると気持ち良いくらいスルっと分離します。強くめくってしまうと割れ目が入ってしまうので、上方向に力をかけつつ外側へ引っ張るようにして楮に傷ができるだけつかないようにして剥いていきます。
こうして剥がした外側を一旦乾かし、そしてまたお湯でグツグツと煮て余計な外皮を取り除いてゆきます。
そして表面の茶色い皮の部分とその下の白い皮の部分へと分けていきます。これを「かずひき」と言います。
森田さんは慣れた手つきでヘラで皮の端を削り出し、ある程度のところから手で皮を引き離していきます。
まるで昆布のようですね、右手にあるのが剥がした外側の表皮、左手が白い和紙の主原料になる部分です。こうして分けた楮はこのまま乾かして保存し、これから1年間和紙の材料として使用してゆくのです。
かずひきをやりながら参加していた方々といろんな話をしていた中で、昔は農家さんが農閑期にこの作業をやっていて、農家の子供達はかずひきを手伝わされ、終わらないと遊びに行けなかったから子供たちは必死でやりとてもかずひきが上手だったという話がありました。
しかし経済の発達に対し「かしき」は衰退し身近ではなくなっています。技術や運送の発展とともにその原料である楮もまた他県から取り寄せたり、海外より輸入するようになったそうです。和紙=国産という漠然と勝手な認識をしていたことに改めて気づきました。
私はこのかしきへの参加をきっかけに1枚の紙を作るまでに必要な材料、それを取るために不要になる材料、そして紙漉きをするまでに多くの人の手による工程を経ているのだということを改めて実感できました。
森田さんのように自分で制作する和紙に必要な量の材料を自分自身で準備できる環境を整えていて、毎年この時期に仲間を募ってかしきを行っていることは和紙文化の継承をしていくという意味でも有意義な活動だと感じました。