稲荷湯の風呂桶

北区の稲荷湯(d design travel 東京でご紹介)では、近頃の銭湯では珍しく木の桶も使っています。プラスチックの桶に比べると手入れに手間がかかりますが、木桶で浴びる湯は格別。きちんと手入れをしながら、1年間使用したものは、お客様に気持ちよく入ってもらうためと、新年に全て入れ替えをしています。東京店では、その入れ替えで現役を退いた古い桶を、毎年引き取らせてもらっています。古いといえども1年しか使っていないので、まだまだ使う事ができます。

そんな木桶を買ってみたけど、白木(無塗装の木)の扱いをよく知らなかったという方も多いのではないでしょうか。改めて、お風呂の木桶の扱いについて簡単に説明したいと思います。

1.毎日お風呂で使う場合のポイント

使い終わったあと、石鹸が残らないようにゆすぎ(場合によっては束子でざっとさらい)逆さまにして置きましょう。逆さまにすることでタガが緩んでしまうのを防ぎます。石鹸の成分が残っていると黒カビの原因になります。特に縁の部分は石鹸がしみ込みやすいので、よく流しましょう。置く時はベタ置きしないように内側にも空気が入るようにしましょう。ベタ置きも、カビの原因にもなります。

2.たまのしっかりお手入れ
普段は束子でこすってぬめりを落とす程度で特別やる事はありませんが、もうちょっと手入れしようと思ったら、クレンザーと束子で磨いてみてください。軽い染みはとれ、タガの銅がピカピカになります。

右側だけ磨いた状態。

界面活性剤で汚れを浮かすというよりも、研磨剤で表面を磨くイメージです。プラスチックと違い、白木は洗剤の成分が中まで染み込んだままになりやすいので、液体のものではなく、粉末のクレンザーが良いです。粉末クレンザーは白木のまな板やおひつなどにも使えるので、便利。おすすめです。

天日干しは、あまり木にはよくありません。乾燥しすぎると、木の歪みや、やせにつながり、元に戻せなくなります。干したい時はなるべく風通しの良い陰干しで。日光ではなく、やさしい風で乾かすようにしてください。どうしても天日干ししたい場合は、表面の水分が軽くとぶ程度の短い時間にしてください。雑菌が…と気になるかもしれませんが、この桶に使われているサワラ材には、もともと抗菌性があります。

3.風呂場に置かず、たまに使いたい
基本的にはお風呂場(湿気のある場所)に置きっぱなしがベストです。でも、たまに行く銭湯で使いたい。できれば普段はしまっておきたい。という方はこの方法で保管をしてみてください。表面が乾いた状態で、新聞紙にくるみます。中にも新聞紙をつめます。さらにビニル袋や段ボールに入れ、日の当たらない押し入れなどにしまいます。この時も、なるべく逆さで置くようにしてくださいね。新聞はある程度の湿度を含み、外気の乾燥から守ってくれます。

東京店ではこの方法で保管していたところ、秋に完売した最後の1個まで、
木がやせずに良い状態で販売ができました。

4.タガが外れた
乾燥させすぎると、木がやせてタガ(外周を留める銅輪)がはずれます。タガには上下があります。両方はずれてしまったら、上下と向きを正しく合わせてください。元あった位置に跡が残っているので、そこに合わせて木に水気を含ませると留まることが多いですが、乾燥させすぎてしまうと、元の跡の位置ではぶかぶかになってしまうことがあります。その場合には、留まるところで水平に整えて水気を含ませましょう。

5.黒カビが生えた
カビには根があり、その根が白木の繊維の中に入り込んでしまうので、残念ながらなかなか落とす事はできません。1. 束子でこする→2. クレンザー+束子でこする→3. それでも落ちなければ、漂白。

塩素系漂白剤はいわゆるカビ取りで使われるものですが、素材を傷めてしまったり、ツンとした匂いが残ってしまうので、酸素系漂白剤を使用しました。


粉末タイプをお湯で溶かしたものをキッチンペーパーに浸し、黒ずみのある箇所に貼りました。1時間ほど置いて最後はたくさんの水でよくすすいで薬剤が残らないようにします。


黒ずみは完全にはなくなりませんでしたが、薄くなりました。多少の黒ずみがあっても使用には問題ないので、その後しっかり手入れをするようにすれば、繰り返し漂白する必要はないと思います。

やはり、プラスチックと違って木は染み込んでしまう素材なので、なるべく薬剤に浸けおくのは避けたいもの。なるべく束子やクレンザーのお手入れまでにするようにした方がよいでしょう。


引き取らせてもらった桶は、手入れをして毎年1月中旬頃に東京店d47design travel storeの店頭に並びます。