140:ひとこと言える勇気

d news aguiの古書店にいて自分のコックピットにこもって査定品出ししていると、ひょっとお客さんが入ってくる。僕は今のところ挨拶はしている。しない多くの古書店のスタイルにまだ納得がいっていないからだ。挨拶は基本したほうがいいし、何より自分の心に響く。でも古書店か何かの本を読んでいて、「いらっしゃいませ」と言う値段をつけていた人がいて少し笑った。古書店は図書館のような立ち読みができるなんというか町に開かれた場所でもあり、商売ではある一方で「町の不要な本を管理している」側面があり、そんな場所で「いらっしゃいませ」はないだろうと思ったらしい。と、この原稿はコックピットで書いているのですが、「お邪魔します」と品のいいご婦人が入ってきた。「お邪魔します」かぁ、なんかいい。

機嫌がいいと「こんにちは」とあいさつする。あくまで気分で今のところいいのだ。さて、問題は「こんにちは」と言っても何にも返答しない人。これは倍に嫌な気分になる。こっちが挨拶しているのに、無視。まぁ、書きながら勝手なつぶやきだなぁとはわかっているが、無視は一番こたえる。何か恋愛本で「恋愛の仕返しで一番効果があるのは無視。人は無視されるのが一番辛い」と書いてあった。思い出した。

さて、自分はどうか、という話を思い出しながら書いてみます。古書店に一人で行って、店に「こんにちは」と入ったり出際に「お邪魔しました」と出たことはあっただろうか。人がいたら「こんにちは」「ありがとう」とは出る。それくらいでもいいから、やっぱり挨拶はしたい。それはなかなか実は勇気がいる。経験で思う。シーンとした店で何も買わずに出る時の独特な気持ち。こっそり出るのが店主にも自分にもいいんじゃないかと思ってこっそり出ることが多いが、今、このコックピットにいて、出て行く時に一言もらうと、なんか100倍嬉しい。こっちはちょこっと会釈するくらいしかできないけれど、やっぱり「いい気持ち」にさせてもらえる。店に挨拶はとても効くのです。

さて、いつか書きたい古書店ネタに「接客するのか」というのがあります。お楽しみに、ですが、古書店なるもの「接客しない」というのが僕はいいと思っている。接客して買う本なんて、なんなんだと思う。本屋の接客は「POP」であり「面だし」である。だから「面だし」の鈍い本屋は「やる気がない」というか「接客してまで買って欲しいと思っていない」と思った方がいい。「男は黙ってサッポロビール」じゃないけれど、男は黙って古書店では買え」がちょっといい。途轍もない人の時間が蓄積したものとしての本なのだから、なんかブツブツ言い合って商売を成立させたくない。
と、いうことで、店に挨拶はとても効くのです。