D&DEPARTMENT 東京店では「東京のものづくり」を紹介しており、アートブラシ社の「毛玉取りブラシ」はその商品のひとつ。その名の通り、衣類にできた毛玉をからめとるブラシで、セーターやマフラーを身につける時期には欠かせない商品です。今回はこの「毛玉取りブラシ」を製作しているアートブラシ社へ工場見学に行ってきました。
アートブラシ社は、初代 大内茂治氏が刷毛職人の修業を経て、「大内刷毛店」として独立したことが始まり。浅草で創業して以来、100年余りもの間ブラシ専門メーカーとして、あらゆる種類のブラシをつくり続け、その技術を継承しています。もともとは浅草近辺の地場産業である皮革製品用の刷毛やブラシを専門店向けにつくっていましたが、 最近では「プロの道具をご家庭に」と一般向けのブラシも展開。 2代目大内達治氏は区の伝統工芸の職人として認定されています。
浅草駅から歩いて約10分、ひっそりと佇むお店が見えてきました。早速、お店の中に。
店内にはブラシからペンキを塗る刷毛など、様々な用途のブラシが数百種類以上、所狭しと並んでいます。見たことのない形もたくさんあり、スタッフみんなも思わず「すごい」と圧倒されました。そんなブラシに見入っていると、今回工場のご案内をしていただく、代表取締役社長(写真右)と2代目 大内達夫さん(写真左)が奥からいらっしゃいました。
職人の方は、勝手に物静かで怖いイメージがありましたが、そのようなことは一切なく、お二人とも優しさに溢れ、気さくに、温かく私たちを迎えてくれました。
衣類用ブラシが出来上がるまでの作業現場を見学させていただきます。はじめにブラシの原料である動物の毛を選別、製毛をしていきます。動物の毛は、化繊毛に比べ静電気も起きにくく、長持ちするそうう。
大内さんが毛束を1本ドンっとテーブルの上に。この様に束の状態で仕入れ、ブラシにする際に、10センチ程に切っていきます。
この束には硬い毛と柔らかい部分があり、それを手作業で偏らないように毛を均一に撒くように広げて重ね、櫛でときます。これをなんと何十回も繰り返す気の遠くなる作業。硬さを均一にする事でヘタらない丈夫なブラシができあがるそう。そして混ぜ合わせた毛は元の束の形に戻し次の工程へ。
ここからは機械を使って、ブラシ本体となる木の表面に植毛を行っていきます。毛を植える順番が描いてあるブラシの本体。この指示に従って毛を植え込んでいきます。なんだか地図みたいです。
先ほど束ねた毛束を機械にセット。ブラシの本体に、ぶつけるように横から毛を植毛していきます。
毛を植える穴の大きさや、深さ、穴と穴の間隔もブラシの使用目的に応じて千差万別。それぞれに、一つの穴に入れる毛の量を決めていきます。
ブラシの本体にみるみると毛が植えつけられていく様子に、一同見入ってしまいました。つくっていたのは白と黒の2色の毛を使用したブラシ。この色の切り替えは「ここだ!」というタイミングを目で確認し、切り替えレバーを操作していました。
最後にバリカンで毛先を整えます。ブラシの用途によっては揃えたり、逆に不揃いにしたり、毛先を特殊加工する事もあるそう。そこから仕上げと検品を行い出荷されていきます。ブラシづくりでは機械も使用しますが、微調整や最終チェックには必ず人の手や目が加わります。ブラシづくりの知識と経験を兼ね備えた職人が携わらないと、機械が優れていても決して良いブラシはできないのだと感じました。
今回案内していただいたアートブラシ社さんは、4月5日(木)ら6月10日(日)まで渋谷ヒカリエ8Fのd47 MUSEUMで開催される【47 REPAIR&CARE 47都道府県の修理と手入れ展】の東京代表として参加いただいています。ぜひ会場へお立ち寄りください。
また「毛玉取りブラシ」は通年、D&DEPARTMENT東京店で紹介・販売しています。元々クリーニングのプロ用を家庭用に改良した物。プロが使いやすいようにと作られた形と特殊な加工をした毛先は、力まずに軽くなでるだけで毛玉を取ることができ、衣類の繊維を傷つけず、風合いをそこないません。面白いくらいに毛玉がとれて、洋服のケアが楽しくなります。一度お試しください!