130:行きつけの店からデザイン依頼!!

前にも書きましたが、知多にいるとよく店があります。阿久比町の隣、東浦町にあるちゃんこ鍋「照国(terukuni)」さんです。ここの最大の魅力は美味しい鍋。ちゃんこともつ鍋があり、本当に大満足。そしてもう一つは子供づれの家族がワイワイいるところ。どこにも妙なカッコつけや気取りがない。壁にお客さんが「この絵、貼って」と描いた絵を持ち込まれたとしても「どうぞー」と言う感じが、美味しい鍋にとにかく集中できる雰囲気を作っています。自宅の居心地、そして店主の気取らないサービス・・・・。遠方からのお客さんが来たら連れて行く地元の自慢の店です。もちろん「その土地らしさ」はありませんが、地元の人が愛する店です。

さて、一大事。そんな照国さんから「移転に伴い、グラフィックやデザイン的なアドバイスを欲しい」と言われました。僕として「デザインがない」から居心地よかったのに・・・・です。そして思うのです「デザインとは何か」です。

まず「これまで使ってきたデザインはガラリと変えない方がいい」と提言。そして、今の店の細かな、例えば「壁に貼ってあるポスター」さえ、新しい店に貼りたいと提言。それについては「どうぞ」とのことですが、「このライトは」「この棚は?」「このテーブルは」と移設するかどうかの確認というか質問を投げるたびに「それは使いません」「それは使います」・・・・つまり、店主の中になにかある。言い方を変えると「かっこうつけようとしている」のです。店主との対話の中で「照国さん、カッコつけようとしてるでしょ!!」と笑いながら突っ込むと、笑いながら、「そうかなぁ」と言う。このライトはいらないけど、この絵はいる・・・・それは「照国らしさ」なのでしょうけれど、同時にとても重要な「照国デザイン」なのです。

新しい店には「新しさ」への期待があります。しかし、新しくなり過ぎて、なんか昔の、前の店の方がよかったと思われたりする。しかし、そんなこともお客さんが地元の常連さんたちなので「お、きれいになったね」くらいで済むとは思いつつも「老舗感」が欲しいと言うオーナーのことを表現すると、新しくする意味、範囲も違ってきます。

デザインのお仕事を頂きながら、「デザイン」自体について考えるきっかけになる。素晴らしい仕事です。
時代も変わり古臭さは新しくしていかなくてはならないとは思っていますが、「むやみに新しい」だけは避けたい。「老舗感」とは「変えるべきことと、変えてはいけないことを理解、運用できている様子」だと思っています。どうも新しい店は、予算の関係で建材もかなり新素材を多用していました。つまり「掃除のしがいのない(経年変化を楽しめない)」ものが多く、その中でいかに老舗感を出せるか。

普通のデザイナーやリフォーム業者なら「単に新しくする」ことが喜ばれる正解だと信じて疑ったりしないでしょう。「なるべく何もしない」を前提になどしないでしょう。しかし「単なる新しい」は「単に古く」なっていく。そんな中での老舗感とは、思いを込めながら古くなっていく風情だと思います。新建材は古くなれば「交換」すると発想されて生まれているでしょう。昔のいい建物や空間は結局「いい建材」を使って丁寧に掃除しながら使っています。今回の新築と移転には、残念ながらそんな気配も感じます。つまり、何も持っていきたいと思えるものが少ない。だからこそ、今回の僕らは依頼されていないかもしれないけれど、この移転の次を考えていきたいと思います。また、ご報告します。