編集長が約3ヶ月間、暮らすように現地を旅して本当に感動したものだけを本音で紹介するガイドブック『d design travel』。今回、三重号の発刊を記念して、本誌掲載地をめぐるスペシャルツアーを開催しました。
2000年以上続く伊勢神宮からヴィソンにオープンしたばかりのD&DEPARTMENT MIE by VISONまで。伊勢の餅文化や松阪牛、伊勢志摩の海人小屋や鰹いぶし小屋も味わい尽くした1泊2日の行程です。〈 前編 〉では、1日目の様子をご紹介します。
集合場所の鳥羽駅は、名古屋駅からJR快速みえまたは近鉄特急で約1時間30分。関東圏を中心に、東海、関西、そして中国エリアからも、各地から集まった参加者のみなさんと合流し、d design travelの旗に導かれ貸切バスへ。車内で簡単な自己紹介をして、最初の目的地、「海女小屋はちまんかまど」へ向かいます。
あさり浜と広大な海を望む伊勢志摩ならではの立地にある「海女小屋はちまんかまど」。現役の海女さんによる手焼きで伊勢志摩の海鮮を味わうランチです。
体験小屋には海女道具なども飾られており、その暮らしを想像しながら、海女文化の説明に耳を傾けました。とにかくみなさん笑顔が素敵でパワフル!最高齢(なんと91歳でいらっしゃる)の海女さんの「昔は日本各地の海に出稼ぎにも行ったのよ」というエピソードに歴史を感じながら、お腹いっぱい堪能しました。
海女さんたちに見送られ、次は「鳥羽市立海の博物館」へ。
全国から収集された木造船や漁撈道具など、約6万点の実物資料を収蔵・展示する膨大で個性豊かな“海のアーカイブ”を案内付きで学んでいきます。
まずは映像で海女さんの暮らしを軸に海の営みを学びます。「はちまんかまど」で海女さんに会ってきたばかりの私たち。よりリアルに情報が入ってきます。続いて、人間と海との関わりを始め、伊勢志摩ならではの海女や神宮を題材とした展示も見て行きます。
そして、海の博物館は、志摩半島で見ておきたい名建築の一つ、内藤廣氏設計です。全ての建物が瓦葺きになっていたり、湿度を要する収蔵庫は三和土(たたき)間になっていたりと、その特徴についても学びながら、見学しました。
所狭しと船が並ぶ収蔵庫はまさに圧巻!何度か訪れている参加者からは「前回来た時よりも展示物が増えてる...」との声も。今なお各地から実物資料が集まり、この場所の取り組みが脈々と築かれていることを実感しました。
伊勢志摩の海の暮らしを学んだあとは、志摩市波切にある「かつおの天ぱく 鰹いぶし小屋」へ向かいます。
かつおの天ぱく代表の天白幸明さんが出迎えてくださり、最寄りの駐車場から歩いていぶし小屋へ。道中では、波切の歴史や街並みについて教えていただきました。
海の潮風に乗って良い香りがしてきたと思ったところで、いぶし小屋へ到着。版画家・徳力富吉郎氏が手がけた力強いグラフィックの暖簾を潜ります。
かつては伊勢神宮への献上物でもあるかつお節の一大産地でもあった波切。かつおの天ぱくでは、昔ながらの製法「手火山製法」でかつお節を作り続けています。現役の作業場であるいぶし小屋で、私たちも燻されながら、かつお節の製造工程や伊勢神宮との関係性を丁寧に説明いただきました。
そして、一番出汁の試飲もいただき、最後には伊賀焼・圡楽窯の黒鍋を使った炊き立てご飯にかつお節をたっぷり乗せたおかかご飯を試食しました。シンプルだからこそ、かつお節の美味しさを直球で感じられます。
なぜこの地で、この製法で、かつお節を作り続けるのか。天白さんたちの情熱を通して学ぶことができました。
もっと詳しく知りたい方へおすすめ>> 三重店レポート|「かつおの天ぱく」工場見学レポート
続いて、英虞湾に浮かぶ60の小島と折り重なるように突き出た半島を一望できる「横山展望台」へ。当日は風が強く極寒だったものの、標高140メートルの高さから望むリアス式海岸は絶景でした。
今回のツアーのお宿は、江戸時代から参宮客をもてなしてきた料理旅館「麻吉旅館」です。急斜面に建てられた趣ある懸崖造(けんがいづくり)の建物は国の登録有形文化財。
館内を案内いただき、普段は朝食後に見学できる土蔵も特別に見せていただきました。代々使われてきた調度品の数々や、迷路のような作りの館内に、驚きが止まりません。
夕食では、鳥羽や志摩、南伊勢産の魚介を中心とした料理が江戸期の器などに惜しまず盛られ、ひとつひとつが絶品。地酒とともに舌鼓を打ちます。そして、参宮客で賑わう江戸時代の様子に想いを馳せながら眠りにつきました。
>> 〈 後編 〉へつづく