群馬の織物産地、桐生へ行ってきました

D&DEPARTMENTの「FROM LIFESTOCK」でもお馴染みの群馬県桐生産地へ、ファッション部門コーディネーターの重松と行ってきました。
「桐生は日本の機どころ」と上毛かるたにあるように群馬県の織物産地といえば桐生。古くから織物産業が盛んで、着物の反物や帯地などの絹織物、戦後は輸出向けの婦人服地で大きく成長し、レーヨンを中心とした多種多様な複合ジャカード織物が特徴です。現代の多様なニーズの変化に応え、最新の技術を用いた織物の開発が盛んに行われている産地です。
※FROM LIFESTOCK:2014年からスタートした、生地産地の”個性”と、その土地に息づく”技術”を、生地見本を再利用して新しい商品に生まれ変わらせて伝える取り組み。

 

まず訪れたのは、桐生産地でも一番の規模を誇る「小林当織物」。

小林当織物は、1920年に創業し、和装から始まり、戦後まもなく服地生産を開始。今では、国内外のファッションメーカーから揺るぎない信頼を得ている機屋です。
また、「FROM LIFESTOCK」の桐生産地の生地は、小林当織物の倉庫に保管されている生地を使用しています。

倉庫で保管されている40~50年前の生地は、ほとんどが「マス見本」と呼ばれているもので、縦糸と横糸の色を変えて、どの配色にするか選ぶための見本です。1つのマスは10センチから15センチで、同柄でできる配色を考えるだけで相当の労力と作る時間がかかっています。こんなに贅沢な見本が作られることは滅多になく、総マスの多色使いは一般の人の目に触れることのない貴重なものです。

そして、今回の桐生訪問で一番の目的は、生地を選んでくること!
早速、倉庫へ案内していただきました。

初めて見る生地ばかりの倉庫に気持ちが跳ね上がり、あたりを見回していましたが、その中で40~50年前の生地が入っている場所は、なんと倉庫のほんの一部でした。情報としては知っていたのですが、目の前にして、このヴィンテージでもある貴重なマス見本の生地には限りがあることを実感しました。

そして、この中から生地を選んでいきます。

選んだ生地は、主にバッグへと変わっていきます。案内していただいた、代表取締役の小林さん、相談役の村岡さんが「私たちも使うことがないからね。」「どこかに行くとしても資料館かなあ。」「これらの生地がこうやってバッグになって、喜んでもらえるのは嬉しいよね」と話されている姿を見て、こんなにも面白い生地なのに行き場がないなんて…と寂しく思いました。それと同時に、D&DEPARTMENTでこれらの活用されない生地を使って、売り場の舞台に出すことは、それを手にする人たちが産地を知るきっかけにもなり、機屋さんにとっても喜ばれる仕組みで、改めて続けていきたい取り組みだと感じました。

 

次は、刺繍メーカー「笠盛」へ

1877年群馬県桐生市で創業した笠盛は、帯の織物業から刺繍業に転身し、独自の技術を開発し、海外での展示会出展にも力を入れ、”刺繍の笠盛”の地位を築いている刺繍メーカーです。2010年には、新たな刺繍加工品を企画し、糸でできたアクセサリーブランド「000」(トリプル・オゥ)を立ち上げました。

そして、洋服の染め直しプロジェクト「d&RE WEAR」では、シリアルナンバーの刺繍を入れていただいている工場さんでもあります。(毎回、全国から集まる何百もの衣類を、ひとつずつ、刺繍を入れていただいています。)

まずは笠盛本社にある「トリプル・オゥ」のファクトリーショップをトリプル・オゥ事業部マネージャーの片倉さんに案内していただきました。

ファクトリーショップには、いくつもの彩り豊かで、刺繍からできたアクセサリーが揃っています。お店には、通常デザイナーや職人の方が交互に立たれているようですので、直接、製作過程のお話も聞けるのも嬉しいですね。

工場がある笠盛パークも案内していただきました。

トリプル・オゥのアクセサリーは糸のみでつくられていて、刺繍そのものを立体的に仕上げています。片倉さんは「人の手でできないことは機械が行い、機械でできないことを人が行う。どちらもあってようやく出来上がっています。」と、話してくれました。最初に"刺繍で立体のアクセサリーができないか?"という発想から始まり、誰もがやったことのない挑戦だったため厳しい意見もある中で、糸の刺し方、糸の撚り、太さなど、あらゆる一つ一つの調整を繰り返し試して、ようやく刺繍でつくる「立体」のアクセサリーを完成させたそうです。
元々高い刺繍技術から、新たに独自の刺繍技術を開発する笠盛のチャレンジ心。これからも笠盛によって、どんなアクセサリーが生み出されていくのか胸が弾みます。

 

最後は、「RUG FROM LIFE STOCK」のラグを作っていただいているニードルパンチの工場「Tex.Box」へ。

代表の澤さんは、独立するときに東京に一番近い機場が桐生なことをきっかけに、この地に魅了され移住したそうです。
澤さんに、大きいニードルパンチの機械と生地に囲まれた工場を案内していただきました。

この機械の中をよく見ると、写真のような多数の針があります。

ニードルパンチとは、この剣山状の針で、複数の繊維を高速で幾度も突き刺すことで、生地の繊維同士を絡ませて圧着させる技法です。
ラグを作る際も、ニードルパンチは欠かせない存在です…。

澤さんはこの技法を使いこなし、さまざまな表情の生地を生み出していました。一つ一つ、どんなもので作られているのか教えていただきました。

澤さんが作る生地はユニークな生地ばかり。布地とプチプチの緩衝材を合わせた生地だったり、靴の中敷を一緒に合わせて生み出された足跡がある生地、生地のシワを寄せて出来上がった生地、習字と重ねて文字が書いてある生地など、全て初めての出会いでした。そしてこれらのほとんどが、なんと澤さんが自らアイデアを探してつくっているそう…!そして、それを面白がって澤さんが作られると伺い、その姿がとてもかっこよかったです。

 

今回、直接桐生で働く方々にお会いし話を聞いてみると、今まで知っていた情報よりも、桐生の面白さ、技術の高さを知り、もっともっと知りたい!と高揚しました。そして、そんな魅力ある方々にD&DEPARTMENTの取り組みを一緒にさせていただいてることは、とても貴重なことなんだ…!と体感した一日でもありました。お会いした方、ひとりひとりが、ある物事に打ち込み探究している姿がかっこよく、それを少しずつでも伝えられるよう、商品や取り組みとともに届けていきたいと思います。