2022年8月4日(木)、D&DEPARTMENT京都食堂にて『今日はいい塩梅』連動企画として、根本雅祥さん(一般社団法人日本塩分管理支援協会 代表理事)と相馬夕輝(dつづくをたべる部門ディレクター)の両者によるトークイベントが開催され、参加しました。
根本さんが代表理事を務める日本塩分管理支援協会は「健康(WELL-being)を意識しなくても誰もが健康でいられる社会を創る」をミッションに掲げ、塩分管理の支援策としてプロジェクトの企画・運営、マンガの企画・出版、セミナーの開催など多岐にわたる活動に取り組んでいます。
今回のトークイベントを含めた企画『今日はいい塩梅』は、より多くの人々に塩に興味をもってもらうために行っているそうです。今まで塩については「減塩」という訴求しかしてきていないため、ごく一部の健康関心層にしか興味をもってもらえませんでした。そこでこのイベントでは「今日はいい塩梅」という新しい言葉を使い、健康に関心がない方々にも塩に興味をもってもらえたら嬉しいという想いで企画されたそうです。
来たる11月13日に開催されるマーケット「今日はいい塩梅」はその活動の一環として、食と暮らしの“いい塩梅”を考えながら、いい塩梅の食事やお菓子を食べたり、音楽やワークショップも楽しめるイベントで、今回のトークイベントはそれに先駆けた企画となりました。参加者もこのマーケットに出店される方々が多く、一緒になって現代版の“いい塩梅”とは何かを探っていくという内容でした。
「塩について知らないな」
dつづくをたべる部門ディレクター相馬の一言から始まったこのトークイベント。「減塩はやりたくないんですよね。でも塩に興味をもって欲しいんです」と根本さん。「生きているだけで意識しなくても勝手に健康になれたら」とも。
塩は生命にとってなくてはならないもの
Na(塩)は体内で、水分量を決めたり、細胞の機能を維持したり、栄養素の吸収を促進したりと重要な役割を担っているそうです。また、血中塩分濃度は常に0.9%に保たれているとのこと。これほどまでに塩の役割がたくさんあったとは知りませんでした。
そんな塩ですが、太古の昔、生命体が海から陸に上がってきた時代、海には困らないほどの塩があったにも関わらず陸にはなんと塩がありませんでした。各地で塩の奪い合いが起き、貨幣の代わりに塩を配ったという史実があるほど陸上には塩がなかったのです。このような歴史的背景から、Na(塩)を再吸収する遺伝子をもった個体のみが生き残り、その遺伝子は現在の私たちにも脈々と受け継がれています。
しかしこの150年で塩が余る時代に
「産業革命後、塩は大量生産できるようになりましたが、Na(塩)を再吸収する遺伝子は私たちのからだに残ったままです。すなわち、人は食事から多くの塩を摂ってしまうにも関わらず体外へ排出しづらい状態になっています」と根本さん。
1日1.5gの塩で生きていける
「では生きていくために1日に必要な塩の量って何gだと思いますか?」と根本さんから参加者に突然質問が。いくつか選択肢がありましたが、私は正直見当がつかずだいぶ多い量の答えで手を挙げてしまいました。
答えは1日に必要な塩の摂取量はなんと1.5g!(注:塩小さじ1=約5g)
そんなに少なくていいとは、大変驚きました。私たちのからだは、こんなにも少ない量で生きられるほど、Na(塩)を再吸収しているのですね。
しかしながら、日本人の塩の摂取量(1日あたり)は男性14g、女性11.8gと、WHOの推奨量5gや生きていける必要量1.5gを大幅に超えており、その塩の多くを調味料から摂っているそうです。さらに欧米人の摂取量8~9gより多いとも。欧米人のほうが食生活から勝手に多く摂取していると思っていました。
「一人ひとりが塩の量をマイナス1gするだけで高血圧などの病気を減らし数千億円の医療費が削減でき、それによってよりよい社会を実現できる可能性がある」と根本さん。さまざまな研究に基づくと、日本人がいま取り組まなければならないのは何よりもまず塩であり、社会全体にとって大きなメリットがあるということが分かりました。
「今日はいい塩梅」
そこで、最初にあった「生きているだけで意識しなくても勝手に健康になれたら」を実現させるために「今日はいい塩梅」で塩に関心を持ってもらい、「美味しい食事を摂りながらみんなでマイナス1gを目指すことができたら、自然と健康でいられる社会になるのでは」と締めくくられていました。
「いい塩梅定食」開発に向けて
私が今回のトークイベントに参加して思ったことは、そもそも今まで塩について特に考えたことがなかったなと。塩の歴史から塩の機能や大切さを知り、生きていくために欠かせない塩についてもっと知りたいと思いました。1日に必要な塩の量が1.5gでいいのに、14g(日本人男性の平均摂取量)も摂取しているが故に悪者かのように扱われている塩。“いい塩梅”で塩と適切に付き合えば健康で満足感のある食生活を送ることができると学びました。「いい塩梅定食」の開発に携わる機会をいただき、塩についてより深く調べたり、考えたりして興味を持つようになりました。これまで美味しい美味しいと食べていたものも、塩のことを気にするようになると塩味を敏感に感じるようになった気さえします。
まずは塩に関心を持ってもらい、“いい塩梅”とは何かを体感してもらうために、d京都食堂にて『いい塩梅定食』を開発、提供していきます。(提供期間:2022年10月28日~12月1日)
当日、このイベント参加者に提供された「保存食lab」さんの“おいしい!”がたくさん詰まったお弁当。出汁を活かしたりスパイスやハーブで味にアクセントをつけることでマイナス1gにつながる素晴らしい内容でした。ぜひ参考にして定食開発に臨みたいと思います。