チェジュ島定食をつくる旅

豊かな自然に育まれた食文化と人々の暮らし

チェジュ島は韓国の南西に浮かぶ火山島。沖縄本島よりも少し大きめの面積で、人口69万人に対して年間1500万人の観光客が訪れるという人気のリゾート地。島ならではの自然と生活文化が現在でも色濃く残り、人々の暮らしや豊かな食文化に惹きつけられ、韓国国内からの移住者も増えているという。
海に囲まれた島なので、多様な海産物がとれるのは当然だが、現在も多くの海女さんが、アワビやウニなどの魚介類や海藻を採取している。
 

 
「海女の家」とよばれる食堂が島内には点在しており、海女さんがとってきた新鮮な海の幸が食べられると地元の人達と観光客が混じり合い、いつも賑わっている。「アワビ粥」と並んで定番なのが「ひじきごはん」。チェジュ島は火山島地質のため、稲作の歴史がなく、畑が中心で、米よりも大麦やさつまいもが食べられていた。今でも麦入りのご飯を出す店もある。チェジュ島固有の地酒「オメギスル」は餅粟を発酵させたもの。かつては家庭でも造られていた日常の酒だった。
チェジュ島の農業は、畑を耕せば大小の岩がごろごろと出てくるので、広い農地を作ることが難しいとされている。岩が出てくるたびに畑の周囲に積み上げ、周辺を取り囲む石垣は、行き場のない石が積み上げられた必然の風景。これらの玄武岩を削って作られるのが島の守り神である「トルハルバン」。「石のお爺さん」を意味し、島のあちこちで大小さまざまな表情のトルハルバンを見かける。
 

 
生活から産業へ
かつてチェジュ島では日本の農家同様、各家庭や村単位で豚を飼育する習慣があった。
「ドットンシ」と呼ばれる便所は豚小屋を兼ねていて、生ごみの処理や堆肥づくりなどの役割を果たし、農業に欠かせない肥料を生む最高の循環型社会を実現していた。1960年代から畜産業が盛んになり、育成環境を厳しく管理し、品種改良も重ね、「チェジュといえば黒豚」というほど、品質が高まっていく。
島だからこそ、外国からの家畜病も防げ、自然豊かな環境でのびのび育てられた黒豚はチェジュ島の人々にとっても特別な存在となり、島の冠婚葬祭では必ず豚肉料理がふるまわれている。
 

 
日本との交流が育んだチェジュの原風景
チェジュ島を代表する農作物といえば「みかん」。
市場にはさまざまな種類のみかんが並び、漢拏山の麓に広がるみかん農園はチェジュ島の原風景となっている。チェジュ島は韓国におけるみかん発祥の地であり、現在も国内で流通するみかんの99%がチェジュ産、約500種類もの柑橘類が育てられている。日本のみかん産地の静岡や和歌山とも昔から交流を重ね、みかん農業を発展させてきた。
 

 
みかんを使った料理もたくさん根付いていて、みかんドレッシングやみかんコチュジャンなど、みかんの酸味と甘味を活かした味付けはチェジュの家庭料理の味。みかんタルトやチョコレート、アイスなどスイーツにもよく使われている。
火山島という独特の自然環境に適応した経験と知恵を現代に活かし、発展させてきたチェジュ島。育たないものは無理に育てず、長い歴史を経て根付いたものを大切にしながら、生活を豊かにしていく島の暮らしがここにはある。
 

 


 
「チェジュ島定食」

※上から、時計回りに
○みかんコチュジャンの豚プルコギ
d食堂チェジュのオリジナルレシピを再現。みかんを加えたコチュジャンで厚みのある豚肉を炒める。
○わらびのナムル
一年を通して食卓に登場するわらび。香りと柔らかさを味わえるナムルに。
○ところてんのネングク(冷たいスープ)
海女さんが素潜りでとる天草をところてんにして食べる家庭料理。
○麦ごはん
水田がないチェジュ島では昔よく食べられていた。ぷつぷつ食感と香ばしい香りのごはん。
○季節野菜とひじきのチャンアチ(酢醤油漬け)
伝統的な保存食のひとつ。チェジュ島で採れる夏野菜にひじきを加えたお漬物。

〈提供期間〉
会期 2022年8月5日(金) ~9月8日(木)
場所 d47食堂(渋谷ヒカリエ8F) Facebook / Instagram
価格 1,980円(税込)
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