「銀峯陶器株式会社」工場見学レポート

d design travel編集長と四日市萬古焼の窯元の1つである銀峯陶器株式会社の工場へ見学に行ってきました。
三重県は土鍋の産地。中でも萬古焼の土鍋は国内産の土鍋の8割以上を占めています。

工場に入ってまず驚いたのはたくさんの土鍋が作り続けられている光景。
ローラーマシンや圧力鋳込み(型に陶土を入れ圧力をかけて形を作る方法)、人の手によって形成された土鍋が次々に出来上がる様子に驚き。さすが土鍋の産地!と実感しました。

銀峯陶器株式会社の初代熊本捨松は陶磁器の卸をしていた1932年当時、品質の高いものが市場になく、自ら品質の良いものづくりを目指して創業しました。

そして高品質のものを量産できる技術を確率し、できたのが三重店でも販売しているロングセラー商品「墨貫入土鍋」でした。

▲貫入とは、表面の釉薬に意図的にひびを入れそこに墨を流してできる技法。当時は陶芸作家が用いる手の込んだ装飾でしたが、銀峯陶器株式会社で量産化に成功しました。白と黒のコントラスト、繊細な模様が美しいデザインは今でも多くの方々から愛されています。

銀峯陶器株式会社では土や釉薬も一から作っています。
ジンバブエの鉱山に特別に依頼した高品質のペタライトを輸入。独自の配合で土に混ぜることによって耐熱性に優れた土鍋が出来上がります。釉薬も工場内で調合。
良い品質のものを作るという思いから決して手を抜かず、素材作りから土鍋の形成、焼成まで一貫してものづくりを行っています。

高品質のものを量産化できる技術があってこそ、今まで銀峯陶器株式会社の土鍋が全国で使われ続けているのだと深く感じました。

 
その後、工場に併設している建物へご案内していただきました。
3代目の熊本哲弥さんの幼少期の住まいであった民家を改修し、ショールームや土鍋の販売などを行っています。
銀峯陶器株式会社の土鍋や器を、日々のライフスタイルに取り入れて欲しいという思いから不定期で開催されるサロン『銀峯倶楽部』では、萬古焼の器や土鍋を使った料理教室などを開催しています。


▲銀峯倶楽部の看板は四日市に工房を構える造形作家、内田鋼一さんが手がけられたもの。

「いつまでも変わらず、後世にも受け継がれて欲しい」という思いから「萬古不易」の印を押したことが萬古焼の名前の由来と言われています。
その思いが今でもこの土地の人々のものづくりにあり続けているのだと感じました。

ただいま絶賛取材中の『d design travel三重』は2022年秋刊行予定です。お楽しみに!

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〈 d design travel 編集部の今 〉
『d design travel 三重』の最新情報をお届けします。
2022年7月6日|2022年10月完成予定『d design travel MIE』の現地取材の様子をほんの一部ですが、映像でお届けします。