京都・宮津の「飯尾醸造」定食
京都の旬や生産者さんを、ご紹介する「京都定食」。今回の定食は、京都府北部・宮津市にあるお酢屋さん「飯尾醸造」を紹介する定食です。宮津市は京都市内から車で1時間半ほど、日本海の若狭湾に面した町です。日本三景のひとつ、「天橋立」があるというとピンとくる方も多いかもしれません。海と山の距離が近く、その両方から豊富な食材が集まります。
この自然豊かで、のどかな土地に「飯尾醸造」は店を構えます。創業は明治26年。128年の間お米作りから一貫して作られる様々なお酢と地元の食材を定食に仕上げました。?
「飯尾醸造」の看板商品である『純米富士酢』。近郊の田んぼで農薬不使用栽培で育てられたお米と山からの湧き水。ただそれだけを原料に造った純米酢です。米酢は、まず収穫されたお米からお酢に合った日本酒を作ります。それを発酵させ熟成期間を経てできあがります。
昨今、技術が発達し数日でできる製法もありますが、飯尾醸造では今となっては珍しいこの伝統的な製法が守られ、お米作りから自社で行うメーカーは唯一無二と言われています。『純米富士酢』はお米作りから2年の生産期間が必要です。「2年」という期間は飯尾醸造のお酢のラインナップの中でも最短で、中には完成まで15年を要するお酢もあります。
また、酢1リットルにつき40gのお米を使っていれば米酢と表記できるのですが、『純米富士酢』はその5倍の200gのお米が使われています。これが『純米富士酢』の濃厚な旨味の特長となり、お料理に深みとコクを加えてくれます。
米酢は和食との相性が抜群。5代目当主、飯尾彰浩さんにお話をお伺いした中で、ひじきを炊いた一品が食卓にあがると、各々ご飯が盛られたお茶碗にひじきとお酢を混ぜて即席の混ぜ寿司のようにして食べることがあるとお聞きしました。お寿司というとハレの日というイメージが強く、家で作ろうとすると、よし!と意気込んで作るものと思いがちですが、普段の料理でも気軽に味わうことができるのだと印象が変わった体験をお伝えしたく、定食の一品にしました。
この地域では「エゴノリ」という海藻が昔から採られおり、夏が収穫の時期で、乾燥させて保存。食べる時にはお湯で煮溶かし煮汁ごと固めます。宮津では冠婚葬祭には欠かせない料理。日常的には酢の物やサラダにして食べられているということで、「海と星の見える丘公園」内森のカフェの皆さんに〝うご〟のお料理も教えていただきました。
森のカフェでお料理を教えていただいた、エゴノリの生産者「カントリーフーズ」さん。
その他にも、山裾の海がすぐそこにある由良川河口にある集落で、江戸末期から作られている由良みかんも今回の定食に使わせていただきました。由比みかんは、朝晩と日中の寒暖差が大きく、潮風が吹く斜面であることなどから甘さと酸味のバランスが抜群。
みかん農家のひとつ、「岸田(秀)農園」では夏に間引きされ大量に捨てられる摘果みかんに注目し、搾汁したものを「てっかジュース」として提案されています。強い酸味とほのかな苦味を生かし、自家製のポン酢にしました。
お味噌汁とお酢という組み合わせも彰浩さんとのお話で生まれたもの。根菜の甘みをお酢が引き立てます。こんにゃく芋と同じく、芋地を生かし生産されているたけのこ芋。12月に最盛期を迎えます。地上に頭を出している姿がたけのこにそっくり。大きいものだと60㎝ほどの長さになります。食感はホクホクとしていて、里芋のような粘りも少し。さつまいもや栗のような甘みがあります。
宮津のさらに北部、山間の上世屋地区にある「世屋蔵」さん。「世屋みそ」はこの地区の特産品。後継者不足により一時は途絶えていましたが、東京から移住した重田さんご夫婦が復活させました。地元で採れた無農薬米を使い、昔ながらの製法を守り作られています。糀のコクもしっかりと感じられる赤みそです。
今、宮津は雪に見舞われ雪かきに追われる日々。しかしその人柄は全く逆で、「飯尾醸造」はじめ、今回の定食を開発するにあたって取材に伺ったり、繋がることのできた生産者さんはとにかくみなさん温かく、昔からの知り合いかと思うほど手厚いご協力をいただきました。
宮津の食文化の豊富さと人柄の温かさとともに、お酢の魅力をたっぷりお楽しみください。
●京都宮津・飯尾醸造定食 1,650円(税込)
「飯尾醸造」さんのお酢各種、食堂でも販売してます。
【食堂店舗情報】
営業時間 11:00~18:00(L.O. food 16:30/ALL17:00)
定休日 火曜日・水曜日
電話 075-343-3215
アクセス 京都市下京区新開町397 本山佛光寺内