季節問わず使える万能調理アイテム
夏も終わり、少しずつ肌寒くなってきた今日この頃。そろそろお鍋の季節がやってきます。
そんな時にオススメしたいのがこの「墨貫入土鍋」。表面にわざとヒビを入れ、そこに墨を流し込んだ装飾を施しています。
そもそも土鍋というのは、名前の通り「土」でできた鍋のこと。火にかけると土が温まりその熱で調理されていくという仕組みです。金属の鍋に比べて熱の伝導速度が遅いため、中のものがゆっくりと温まります。保温性が高いことも特徴で、炊飯、煮物、蒸し料理など、通年使える優秀な調理器具なのです。
つづく地域
土鍋などの陶器が盛んに作られているのが三重県。現在でも多くの窯元が残っています。
その中の一つ、四日市萬古焼(よっかいち ばんこやき)は国内産の土鍋のほとんどを手掛けています。
四日市萬古焼とは三重県の四日市市と菰野町を中心に生産されている焼き物のこと。
特徴は優れた耐熱性で、 ペタライトと呼ばれる熱に強いリチウム鉱石を40%ほど混ぜています。 それにより強度が増し、直火にも耐える耐熱性があるのです。
それまでの土鍋は火加減を調整しないと割れる恐れがありましたが、ペタライトを混ぜることで「割れにくい」土鍋として全国に広がったのでした。
つづく仲間
そんな四日市萬古焼を製造し、墨貫入鍋を始め、様々なロングセラー商品を生み出しているのが1932年創業の銀峯陶器株式会社。ユーザーの立場になってモノづくりを行い、幾度となく土鍋界の業界水準を塗り替えてきたスペシャリスト集団です。
原材料の土作りから釉薬の調合・焼成まで、全て国内の自社工場で一貫性で行なっているため、高品質な商品が生み出されています。材料も選りすぐりのもので、耐熱性の核となるペタライトはジンバブエにある鉱山に特別に依頼して、世界で唯一、銀峯陶器株式会社の製品のみが、陶土50%以上という高比率で使用しています。
陶磁器の卸をしていた初代・熊本捨松さんは、当時質の高い陶器が市場に出回っていなかったことを受け、「品質の高いものづくり」を目指して1932年に開窯。製造品目は土鍋だけでなく、食器・花器・化粧品の瓶などを主として製造を開始しました。
その後、2代目・熊本哲三さんが跡を継ぎ、当時一般的だった白地に絵柄というデザインではなく、抹茶茶碗のような高級品にしかなかった三島技法を土鍋に取り入れた「花三島」を開発。”土鍋のスタンダード”と呼ばれるほど一世を風靡しました。
↑1961年には工場の効率化を図るため、60mにのぼるレンガ造りの本焼成トンネル窯を導入。
そして現在、跡を継いでいるのは3代目の熊本哲弥さん。
2000年に土鍋メーカーとして初めて「ISO9001(※ 1)」を取得され、職人の勘どころではなく、明文化して技術を継承するシステムを構築し、常に品質に厳しく、本当に良いものを機械と人の手をバランスよく配置した生産ラインを作り上げました。
それから13年たった2013年には三重ブランド(※2)にも認定されます。1932年創業時から培われた伝統や技術をベースにして、時代のニーズを取り入れながら三重県の県産品として多くの人々に使われ続けています。
※1 一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるための品質マネジメントシステム規格のこと。
※2 三重県を代表する県産品を通じて三重県のイメージアップを図り、県産品全体の評価の向上や観光などの振興を図ることを目的としてスタートした取組のこと。①コンセプト②独自性・主体性③信頼性④市場性⑤将来性の5つを基準とし、選定している。
使い続けるうちに味わい深くなる、墨貫入土鍋
1955年、初代・熊本捨松さんが開発したこの「墨貫入土鍋」は、銀峯株式会社の中でもっとも歴史ある土鍋です。60年以上たった今でも”古さ”を感じない飽きのこないデザインです。
↑貫入のデザインは一つづつ異なり、選ぶのも楽しい
特徴的な貫入という、素地と釉薬の収縮の差によって釉層に入るひび割れを作り出す技法は、もともと陶芸作家が作品に用いるような手の込んだ装飾でした。そこに着目し、はじめて量産品に取り入れたのが銀峯陶器株式会社です。当時は絵柄の鍋が多く、模倣品などが出回っていたようでした。他には無く、高品質で独自性のあるデザインとして墨貫入の研究開発を進めたそうです。しかし、実際は気温や温度変化によって美しいひびの入れ方をコントロールするのは難しく、職人が一つ一つ見極めて生み出しています。
出来上がったばかりの白と黒のコントラストが美しい姿は勿論のこと、長く使い続けるとヒビの数が増えていき、風合いが変化して味わいが深くなっていく姿も魅力の一つです。
目止めの方法
土鍋は特性として吸水性(汚れやニオイになってしまう原因)があるため、使用する最初に”目止め”をする必要があります。
①鍋に8分目ほどの水を入れ沸騰させます。
②沸騰したら弱火にして、水で溶いた小麦粉を入れよくかき混ぜます。
③弱火で5分ぐらい煮て、火を止めてそのまま冷まします。
④その後、きれい洗い流し乾燥させれば完了!
その他、使い始めより5回目までは濃い味付けの料理(カレーなど)は避けてください。カビ・ニオイがつく原因になります。
お気に入りのポイント
日本では土鍋は冬のイメージがありますが、私は常時手の届くところに土鍋を用意して日常的な調理道具として重宝してます。8号鍋は4人くらいで囲むのにちょうどよい大きさで、それこそ季節関係なく人が集まる時はメイン料理でよく使っています。熱がじっくりと伝わる土鍋はカレーやシチューなどの煮込み料理でにもおすすめです。6号の1人用は帰宅後さっと冷蔵庫にある食材や麺、ごはんを煮てそのまま器として食卓に出せるのも便利です。アルミやステンレスの鍋とは違ってうつわとしての側面もかねそろえているのが土鍋の最大の魅力。使い込むほどに貫入が増え自分の道具として育っていく過程も楽しんで欲しい。(東京店/阿部里奈)
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