岩手定食ができるまで2〈紫波・盛岡編〉

d47食堂がオープンしてからずっと変わらないメニュー、「紫波フルーツパーク」のぶどうジュース。

岩手県の中央部を流れる、北上川。その川を挟んで西側は、水はけの良い土壌から畑や田んぼが多く広がる。フルーツパークがある東側は、赤土で粘土質。古くから果樹栽培に適した土地と言われ、ぶどう作りが盛んに行われている。

敷地内には、様々な品種のぶどうが、たわわに実り間もなく訪れる旬に向けて静かに色づいていていた。

ワイン作りをメインとして行われているが、ぶどうジュースにはキャンベルを使用し、無添加、無加糖。秋に採れたぶどうを搾り6ヶ月熟成させてゆっくりと作られるジュース。収穫された年によって味わいが変わるそうで、今年は特に出来が良いとの事。

敷地内の広いぶどう畑に案内していただき、サニールージュ、ハニービーナス、秋クイーンなど様々なぶどうを試食。醸造部の半田さんの両手でぶどうにそっと手を添え摘み取る姿は、ぶどうへの愛情を感じずにはいられない程。

まだ収穫時期まで数日あるとは言え、ジューシーで芳醇。皮ごと食べれる物や食感がサクサクしている物まで個性もそれぞれ。

紫波町で作られたぶどうでワインやジュースを作りたい、自園自醸への想い、紫波の気候風土と作り手の人柄、その全てが詰まっている。紫波町のぶどうジュース、ゆっくり時間をかけて飲んで欲しい。岩手は広い、ぶどう畑に後ろ髪引かれつつ私達は、盛岡へ。

盛岡と言えば、冷麺、じゃじゃ麺、南部煎餅、朝市、そして地元の人が必ず教えてくれる、「ベアレンビール」。

盛岡駅から、車で15分ほど。創業から15年、地元岩手に根ざしヨーロッパの伝統的なビール文化を尊重した手造りのビール。岩手で出会った方々は、口を揃えて旨いと言う。そして、街のあちこちに気軽に立ち寄れるタップルームもあり、どの店舗も活気があり混雑している。

実際に工場内をみせていただくと、麦芽の粉砕に使用されているモルトミルは、1900年製の機械が現役でゴロゴロと動き、1906年に造られた銅製の仕込み釜で煮込まれ発酵へと移る。ほぼ手作業と言っていいほど、6名の職人さんの経験と匙加減で味わいが決まっている。訪問した時は、大きな釜に職人さんが入り、不要になった麦芽を手作業で?き出していた。この麦芽カスも飼料として再資源化し岩手県の環境負荷の軽減も、会社全体で取り組んでいる。地元を循環し暮らす人々に浸透している。ビール生産量の7割が地元で消費されているのも納得。乾杯がつなぐもの、ビールを介してまずそこで暮らす人たちが喜び、造り手に想いが帰ってゆく。そこからまた広がり続けるベアレンビール。チームワークの良さをも、その味わいからも感じさせられた。

 

盛岡での滞在期間は、2日間。その期間中に必ず体験しなければならない事、それは、盛岡三大麺料理のひとつでもある、わんこ。

私達は、緊張感とともに創業明治40年の「東屋」に向かった。

暖簾をくぐり、階段を上がると「はいじゃんじゃん」「はいどんどん」と言うかけ声とともに、カシャンカシャンと積み上げられる小さな椀。この小さな椀の事を岩手の方言で「わんこ」と呼ばれる。

畳の部屋に通され、前掛けを首から下げ待っていると、鶏そぼろ、なめこおろし、一升漬け、お漬物、とろろ、海苔、胡麻、マグロのお刺身が机に運ばれてきた。これから、わんこそばなのに刺身?スタート前に、お給仕さんの説明を聞いていると、それら全てが薬味だと言う。お腹いっぱい沢山食べれるように、少しずつ味に変化をつけて蕎麦を食べてほしいと。

そうこうしていると、「お椀の蓋を開けたらスタートです」と言われ、おもむろに目の前の椀の蓋を持ち上げると、「はいじゃんじゃん」心の準備が…などと言っている場合ではない。始まってしまったのだ。

ほんのり暖かく、ひとつまみ程度のお蕎麦が投入され口に運ぶと、すかさず次が放り込まれる。最初は、皆軽快に食べ進み優雅に薬味を楽しんでいる。

15杯で通常の盛り蕎麦一人前と言われているらしいが、あっと言う間に空になった椀が積み上げられていく。「おかわりお持ちしまーす。」で一度お給仕さんがいなくなる。その時が小休止のチャンス。再び二段に積まれた蕎麦椀を見事なバランスで持ち運び、再び「はいどんどん」「はいがんばって」声援を受けながら食べ進む。

じわじわ腹にたまる。そろそろ蓋をしたい、顔ギリギリの所で椀をゆすりながら放り込む準備をしている。近過ぎる、逃げられない。思い切って蓋をすると、「あれあれーもうごちそうさまですかー?お蕎麦が一本でも残っていると、駄目なんですよ、確認する為に蓋を取ってもらえますか?」言われるがまま持ち上げると、すかさず蕎麦が放り込まれ、再びわんこスタート。やっやられた、、、と心の中でつぶやきながら、止め時を逃す。今一度隙を見て蓋をする。すると、どうせだったら、ぞろ目にしましょう!縁起良くと言ってくる。また、蓋を開ける。このやりとりは、一体いつまで続くのだろうか。

ふと、周りを見渡すと先ほどまで無かった椀の壁が。50、60、70とどんどん増えていく。薬味でお口直ししながら、「じゃんじゃん」「はい、どーんどん」さすがに食堂チームも限界。しかし、お給仕さん達の限界からの、おかわり術により、じわりじわりと数が進み、なんと170杯の大記録がでた。

 

宴会の最後に大勢の人に蕎麦をふるまう事が習わしの岩手。茹でたての暖かいそばを美味しく食べてもらいたい。「もうけっこう」「まあ、そういわずにもっともっと」「さあ、どんどん召し上がれ」亭主のあるを尽くしてのおもてなしの心。身も心も溢れるほどに満たされ、歩く速度は牛歩並の取材陣。車は、一気に岩手を北上する。

 

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【d design travel showと岩手を食べる会】
開催日:2018年10月25日(木)
場 所:8/COURT、d47食堂(渋谷ヒカリエ8F)
参加費:6,000円(岩手号1冊付き、ドリンク・フード込み)
定 員:80名
<第一部>トラベルショー@8/COURT
19:00~20:00(開場 18:00~)
<休憩>ミュージアムツアー@d47 MUSEUM
20:00~20:30
<第二部>岩手を食べる会@d47食堂
20:30~22:00
問い合わせ先:d47 design travel store(TEL:03-6427-2301)
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