岩手定食ができるまで1〈一関・遠野編〉

 

北海道につぐ2番目の広さを誇る岩手県。県央、県南、沿岸、県北の4つの地域に分かれ、それぞれ同県でありながら様々な自然環境と食文化。

私たちの旅の始まりは、県南端に位置する一関市から始まる。

ここ、一関は伊達藩から伝わった餅食文化が受け継がれている地域。ハレの日のごちそう、果報餅を求め「世嬉の一」へ。

テーブルに運ばれてきたお膳には、いくつもの小さな椀にそれぞれ違う衣をまとった餅が。あんこに胡麻、胡桃に納豆、じゅうね(えごま)沼エビやずんだ、じつに様々。その種類は300種以上もあると言われている。

その昔旨い米は江戸に献上しなければならなかった、いかにくず米を美味しく食べるか、知恵と工夫で様々なタレが作られた。一関の人達は、「餅はつきたてでなければ餅じゃねえ」というほど。頬張れば納得。もっちりとしていてあっという間にペロリ。お腹いっぱいになったと思っていると、大きな椀のお雑煮が運ばれてきた。またもや餅。本当に餅に始まり餅で終わるのだ。

 

人がこの世に誕生した時に祝いの餅をつく。そしてその生涯を閉じる葬儀にも餅をつくという。人生の節目節目、家族との繋がり、客人へのおもてなしの心が形になった文化を自然と感じた取材のスタートだった。

 

私達は、三陸を経由し車は遠野へ

 

道路脇には、白く小さなそばの花が一面に咲いている。お辞儀した黄色い葉っぱは、タバコ畑。外の景色が少しずつ変わっていくその途中、綺麗にV字に整列し青々とした背の高い茂み。良く見ると,ツルの所々に小さな毬のような花が。そうホップ畑。遠野市は国産ホップの生産面積、全国1位。市役所にホップ課があるほど。

遠野のビールづくりの新たな拠点として2018年5月からスタートした「遠野醸造」を訪れた。通常は、ペレットと呼ばれる粒状のホップで仕込みをするが、ホップの産地遠野市では、フレッシュホップでの仕込みが可能。お店のすぐ側にある畑でツルごと刈り取って手作業でホップを摘み取る、それをそのまま原料として使用できるのは、遠野ならでは。

ホップは刈取り直後から劣化が始まる。そのため生産時期と量が限られ、まさにここでしか飲めないビール。

その土地に根ざした品種でビールを作り、醸造家、生産者、地域の人たちとビールを介して遠野を盛り上げていきたいと代表の袴田さんは言う。

 

今後は、地元産のリンゴや珈琲を使ったスタウトなどの製造も考えているなど、マイクロブルワリーでしか出来ない事がまだまだ沢山あると話してくれた。

地元産のホップでビールを、地域と共に作り上げる。

 

私達はグラウラー(持ち帰りビール専用ボトル)に、それぞれ好みのビールを注ぎ入れてもらい、遠野の空気とともに持ち帰る事にした。

 

遠野の晩は、「とおの屋 要」へ。

遠野訪問のもうひとつの目的、どぶろく。

独創的なお料理はもちろんの事、何と言っても自家栽培の無農薬米で作られる、どぶろく。

その味わいは、まるで自然派ワインを思わせるような飲み口。

ひとくち口にしただけで遠野の風土、熟成の音が口の中でピチピチとはじけるような味わい。素材から土地の個性や風土を思わせる。

ご主人の要太郎さんは、どぶろくをはじめ食を通して発酵や食材の末路、もっと目に見えない部分をどう見せていくかを考えていかなければならないとも話していた。発酵、熟成、受け継がれていくもの、そのどれもが長く時間の必要になる事。古民家を改装した、一日一組限定のオーベルジュ。おいしい料理は、自然と会話も弾ませてくれる。

 

一つの皿の中に描かれる味わい。私達は、これからどんなストーリーを、丸盆の中に岩手を表現していく事になるのか。話は深夜まで続いた。

 

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【d design travel showと岩手を食べる会】
開催日:2018年10月25日(木)
場 所:8/COURT、d47食堂(渋谷ヒカリエ8F)
参加費:6,000円(岩手号1冊付き、ドリンク・フード込み)
定 員:80名
<第一部>トラベルショー@8/COURT
19:00~20:00(開場 18:00~)
<休憩>ミュージアムツアー@d47 MUSEUM
20:00~20:30
<第二部>岩手を食べる会@d47食堂
20:30~22:00
問い合わせ先:d47 design travel store(TEL:03-6427-2301)
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