スタッフの商品日記 058   Yチェア

カール・ハンセン&サン社が培ってきた技術とハンス J. ウェグナーの稀有な才能が生んだ名作椅子

1950年の発売から約70年経った今もなお販売が継続され、世界中の人に愛されているCH24通称Yチェア。ウェグナーが過去にデザインした椅子は500以上にものぼり、その中で最も販売されているのが最初にデザインしたYチェアなのです。

つづく産業

カール・ハンセン&サン社の創業は110年にもさかのぼります。デンマーク、オーデンセにて、1908年10月28日に、創始者である、カール・ハンセンが自身の名を付けた家具工房を開業したのが始まり。主な製品は、当時主流であったヴィクトリアンスタイルの重厚な注文家具。小さな工房で家具を手作業で製作し、高い品質、クラフトマンシップ、そして伝統が工房の基本となっていました。1915年には工房は軌道に乗り、事業を拡大、それまでの小さな工房は、モダンな機械を導入し、家具職人と機械工が肩を並べる家具工場へと発展します。当時としては機械工の導入はとても先進的だったそうです。

馬車に乗った子供がカールハンセンの息子、のちに2代目となるホルガー・ハンセン

ハンス J・ウェグナーとの出会い、最初の名作椅子の誕生

1930年代から40年代は世界的な経済恐慌により家具の消費が大きく落ち込みますが、2代目を任された息子のホルガー・ハンセンの熱意と斬新なアイデア、経営手腕により長く続いた経済恐慌を切り抜けました。そうした中、当時の営業を担当していた、アイヴィン・コル・クリステンセンの紹介でホルガー・ハンセンは一人の若いデザイナーに出会います。それがハンス J. ウェグナーです。当時新進のデザイナーであったハンス J. ウェグナーをオーデンセに招き、協働を提案。ウェグナーはオーデンセに3週間滞在しこの21日間でアイコニックともいえる4つの椅子をカール・ハンセン&サン社の為にデザインします。それがCH22、CH23、CH24、そしてCH25。その中のCH24が今もなお、販売が続いているYチェアでした。発表されたデザインはすぐには評価されなかったものの、2-3年後にはデンマーク、そして海外でも大きな反響を得ました。

ちなみに日本にYチェアが最初にやってきたのは1962年に松屋銀座で行われた「デンマーク展」が最初といわれており、フリッハンセンのセブンチェアやレ・クリントの照明とともに展示されていたそうです。

リデザインによって生まれたYチェア

カール・ハンセン&サン社のクラフトマンシップと工業化、その個性をデザインに落とし込んだハンス J・ウェグナーによる名作椅子です。デンマークデザインの第一人者であるコーア・クリントによリ継承されたリデザイン、ウェグナー自身も大きく影響を受けており、中国の明代の椅子からチャイニーズチェア、チャイニーズチェアからYチェアへとリデザインされていきました。ウェグナーがデザインした椅子のほとんどは直線的なデザインは少なく加工に手間がかかりますが、その中でも機械加工を取り入れコストダウンをしYチェアは作られています。

Yチェアのパーツの特徴

①背もたれ
手で握るのにちょうどよい太さといえる直径30mmの丸棒のアームを曲木技術を生かし成型されています。一番圧力のかかる背中にあたる部分を斜めに削る事で面積を増やし緩和させ、座る人の立場に立った工夫が施されています。さらに、チャイニーズチェアは3次元のアームに対し、リデザインしたYチェアのアームは2次元で成型することで加工が容易になり、コストダウンそして量産化につながっています。

②Yパーツ(背板)
CH24がYチェアと呼ばれるようになったのはY字型を背もたれのパーツに理由があります。日本で発売された当初は、「Vチェア」と書かれていることもあったそう。合板の板をY字形に成型する事で、強度が増し軽やかな形状に仕上がっています。このパーツは2次元で加工されているが、曲がった背もたれパーツにに差し込むことで3次元の成型へと変化する点も工夫があって面白い。

③ペーパーコード
原料はスウェーデン産の針葉樹を再生紙に加工したもの。樹脂を含浸させた45mm幅の紙の帯を撚り、その3本を表面が平滑になるようにさらに撚っています。張り替えの寿命は約10年~15年で布張りの座面と同じくらいもしくはそれ以上に耐久性があります。

お気に入りのポイント

もともとUSEDとして購入したYチェア。座面は破れ、フレームはがたつきがありそれはもう散々でしたが、直しながら使えるこの椅子のポテンシャルを信じ購入しました。職人さんにペーパーコードを新しく張り替え、木部のがたつき、ソープでクリーニングをしてもらい見事に復活!使用はまだ1年も経ってないですが、モタれた時の背中の当たりの良さや肘を置ける快適なアーム、何よりも脚を乗せて座ったり、胡座をかいたり、横向きになったりと座り方の自由があり、とても快適。座った時にペーパーコードがきしむような音もどこか懐かしく感じ気に入っています。後々はオイルを塗って茶褐色に育てていこうと計画中。

 

7/25(日)まで東京店ではYチェアを含むハンス j・ウェグナーがデザインをした5つの椅子の展示販売を行っています。→詳しくはこちら

 

Yチェア ビーチ ソープ仕上げ