2021年3月2日~3月29日までD&DEPARMTENT JEJU by ARARIOで世界初のd newsの企画が行われました。d newsとは、D&DEPARTMENT JEJUの中に1部屋だけある宿泊付きギャラリーショップスペースです。国内外の作り手が店舗の中に中長期滞在しながらショップをオープンし、地域と交流するプログラム。第一弾企画では、ソウルのコーヒーメーカーFritz Coffee Companyのバリスタが27日間滞在し、現地のコーヒー農家や焙煎家と交流しながら、ポップアップカフェをオープンしました。そのレポートを現地からお届けします。
→ d news 初開催レポート その① を読む
地域のコーヒーショップを紹介しながらワークショップを開催
d : このd news企画のハイライトのひとつはワークショップ「コーヒー探求生活」でしたが、どのようにこのプログラムを計画したのですか?
f : 自分たちのコーヒーを紹介するのもよかったのですが、新しいコーヒーの世界へ案内をしてみたかったんです。結局、毎日開催しました。
d : 最初は週2~3回の予定だったのに。
f : たくさん紹介したかったんです。大変でしたけど。スタッフ総出でエネルギーを注ぎました。これまで人々はコーヒーを覚醒剤として楽しんできました。カフェインの力を借りたい時にエナジードリンクとして。コーヒーは今、それを超えていています。世の中にたくさんのコーヒーはあるけれど、ひとつの場所で楽しむ機会はなかなかありません。だから私たちがそのような場所を作って、合計9杯のコーヒーを飲み比べして、自分の好みを見つけることができたらと。自分の好みを持っていれば、さらにコーヒー愛をもって、いろんなコーヒーと出会えるのではと考えました。
d : 本当に大変だったと思いますが、毎日開催していただき、合計200人近くの人々がコーヒー探検を経験し、貴重な思い出となりました。お客様からも「ひとつの場所で9店のコーヒーが飲めるのは本当に貴重な体験でした」という感想をいただいています。ソウルでFritzを知っているお客様にとっても参加するのは大変で、ワークショップの空き状況を調べて、それに合わせて宿とエアーを予約して、チェジュ島までわざわざ来なければならない。プログラムへの参加自体が情熱がないと叶いませんでした。
チェジュらしさとは 個人の価値観がつくるローカリティ
d: チェジュ島に滞在しながら、チェジュらしさを発見できましたか?
f : 滞在中、ずっと考えていました。自分はチェジュについて語れるか?と。チェジュを知りたかったのでリサーチして、いろいろ行きましたが、まだ言い表せません。もっと長い時間を過ごし、ここで生活を続けたら少しつづ見えてくるかも。人間は自然に環境に適応したり、それを変えて生きています。チェジュの持つ独特の気候、地形、アクセシビリティなど、チェジュの独自性はたくさんあると思います。そしてそれらは人間によって表現されるものだと思うのです。ここには多くの石垣がありますが、自然に人間が生活を営む中で造られてきたものです。チェジュらしさは今でも新しくつくられていっていると思います。チェジュでブルワリーを始めたマグパイも、最初は「なんでチェジュでビールを?」と思われていましたが、今ではすっかりチェジュに根付いています。
d : タプトン(dのあるエリア)での生活はどうでしたか?仕事以外では何をしていましたか?
f : 仕事の後はワークショップの準備が忙しく、時間が空いたら夕食を食べに行きたかった店へ行くという生活でした。ひと月もあると、「観光」ではなく「生活」になりますね。d newsには洗濯機もあって助かりました。私は普段、週1回のペースで頭を剃るのですが、裏通りにセンスのよい散髪屋があって、3~4回通って常連になりましたよ。
d : あなたにとって美味しいコーヒーとは何ですか?
f : 難しい質問ですね。以前は自分の定義を持っていました。このように作られて、このように淹れられたコーヒーが良いコーヒー、もう一方は間違ったコーヒーだと。でもこれは私の傲慢さであり、人生の価値は人それぞれ、コーヒーから得られる喜びも人それぞれ違うと思うようになりました。なので今はコーヒーの良し悪しはつけないようにしています。
d : チェジュでは本当にカフェが増えてきていて、簡単にオープンできてしまう部分もあります。それがチェジュのためになっているか疑問が残ります。チェジュで創業をして、コーヒー関連の仕事をしようとする人たちにアドバイスをお願いします。
f : 地域性は個人がつくることではなく、個人の集合体が何らかの形を形成することだと思います。自分が体現したい個人の価値観を具現化すれば、自然と周りも魅了され、一緒になってくれ、地域性になっていく。だから自分が感じる価値観を具現化して欲しいです。
d : このdのチェジュのプロジェクトで私が思う一番大きなことは、彼らが私たちを受け入れてくれたということです。これまで仕事とプライベートには一線を引いていましたが、今は時間が何よりも貴重だと思えて、働く時も幸せに、好きなことをしたいと思っています。もともと自分は自ら一人苦しんで悩んで仕事するタイプだったのですが、今回、そんな悩みが少し整理されました。紹介していただいたチェジュの焙煎家たちは、本当にコーヒーが好きで、個性があって、地域が彼らにひっぱられていました。だから最終的には「この地域は自分から影響を受けるんだ」と考えて、本当に自分の好きなことをしようと思っています。
f : 私はみかんがチェジュではないし、ハルバン(伝統的な石像)がチェジュだとも思っていません。チェジュの人々のライフスタイルは、日々の生活や環境によって作られ、個性になっていったのです。一人一人が自分の幸福について考え、自分の価値観を具現化していき魅力的になれば、「チェジュに行けばその人に会える」と感じるその瞬間がローカリティになると思います。私たちはローカリティを作り込む必要はないと思っています。
d : 素晴らしいですね。
f : あなたはもうやってますよ。
d : 本当に素晴らしいメッセージをありがとうございます。d newsを経験した後と前では何が違いますか?
f : 一番大きなことは、時間がゆっくりと進むということ。ひと月はあっという間でしたが、日々の日常を過ごすにあたっては、本当にゆっくり過ぎゆく夕方時間のようなものを経験しました。環境というのは人に影響を与えます。チェジュにある独特の環境、静かな夕暮れというのか、もの静かというか・・・。そのような雰囲気がとてもよかったです。食べ物もおいしかったですし、本当に気持ちよく過ごしました。ソウルのFritzの常連さんもきてくださったし、ポップアップ中は1日おきにきてくださる常連さんもできました。dのスタッフだけでなく、フライターグやマグパイ、ABCなど周辺のお店のスタッフたちと、何か共同体のような雰囲気がありましたね。そんな雰囲気によって、魅力ある良い方々が集まっていました。
d : ありがとうございます。1ヶ月間もの間、本業を休んで、他の土地で生活することは容易ではなく、上手くいくか心配でしたが、快くOKしていただき、バリスタのみなさんと私たちの共同体の一員になっていただいたと感じました。
f : 次回はもっと良くしていきましょう。
d : 本当にありがとうございました。
D&DEPARTMENT JEJU by ARARIO 代表 キム・ジワン
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