スタッフの商品日記 053   ぶんぶく テーパーバケット

空間を邪魔しないデザイン

誕生と特徴
昔、家の中に「ゴミ箱」といわれるような道具はなく、それまで「ゴミ箱」といえば、家の外に置いてゴミを貯めておく木製の箱のことをさしていたようだ。「ゴミ箱」が家の中やオフィスで普及していくにあたり、バケツとは違う形に進化させる目的で開発された。もともとスチール製で丈夫であることに加え、胴体部分の強度を上げるためのリブを設けた。出荷時に重ねても深くはまらず外しやすいという利点がある。

指先を怪我しないように、会社で働く女性のストッキングが伝線しないように、という配慮から継ぎ目のない板を「カシメ加工」で処理している。(昔はストッキングも高級品だった)「カシメ加工」とは、金属の板材と板材を曲げたり丸めたりして、そこに圧力をかけてつなぎ合わせる工法。

テーパーバケットの「taper」は「先細り」という意味で、形状も底になるにつれ細くなっている。見た目だけでなく、この形状である事で製品を重ねる事が可能になり、輸送時の効率が上がった。また、店頭や倉庫では小スペースに何個も置く事が出来る。公共の場で使われる環境備品をつくるメーカーらしく、手の届きやすい価格設定で、空間を邪魔しないデザインが魅力となり、誕生から60年以上愛されている。変わらぬ形で作り続けてきたことが評価され、2015年にグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞。



つづく仲間
株式会社ぶんぶくは金物製造業として1918年に創業。戦前は、煙突・水ひしゃく・バケツ等を製造していたが、戦後は金物問屋に転業。その後、やはり独自の製品を開発したいという思いから、石炭バケツ・ちりとり等を製造する企業としての道を再度歩む事を決心する。設備投資も行いトタン板・鉄板の加工~塗装工程まで一貫して製造できる体制を整えた。スチール製家庭用品のパイオニアと自負して製品を展開。

「丁寧」テーパーバケットは機械を使って作っているが、人の手を介さずには作れない。1個ずつ丁寧に作り続けられている。

「丈夫で長持ち」錆びにくい鉄板を使っていますと謳うなど、いかに長持ちする製品を作るか、というところに情熱が傾けられてきた。"消耗品を作っていない"という気持ちが、創業当時からある。

「利は元にあり」これは商売の格言ではあるが、お客様はもちろんのこと、仕入れ先様とも大事にお付き合いする事を欠かしてはいけないと、代々引き継がれている。

「丁寧」「丈夫で長持ち」「利は元にあり」という考えを大切にし、ものづくりを続けている。


昔のカタログから抜粋
長く使える製品作りを大切にしていた様子が伝わるページ

社内に残っている最古の資料

様々なバケツが掲載されている



社名の由来のひとつとして、おとぎ話の分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)があげられる。おしょうさんが持っていた茶釜(狸の化身で、頭・足・尻尾が生えている)を屑屋の男に手放したところ、その茶釜が綱渡りなどの芸をし、これを見世物商売に屑屋が大繁盛。茶釜たぬきは分福と呼ばれた。(他に、「他人より勝る」という意味のたをぬくという点からたぬき)



製造工場内の様子
国内の生産拠点、福島県にある二本松工場

二本松工場では主に板金加工を行なっている。板金加工とは金属の板に対して穴あけ、切断、曲げ、溶接などを施す加工のことでその技術は自動車や建築など多くの工業製品に使われている。こちらではパンチ加工後の板金を折り曲げ形にする加工を行なっている。上下の金型が板金を押さえつけることにより、板を折り曲げる仕組み。曲げは直角だけでなく、R付の曲げ、段曲げなど各種金型を用意している。

工具は可動式のワゴンに整頓されている

製品を載せたパレットを運ぶためのフォークリフトにもぶんぶくのロゴが!



つづく地域
二本松工場で年に1度、小学生の社会科見学を受け入れ、地域の活性化に貢献している
       

その他に、地域の役所へ製品の寄贈を行ったり、工場にAEDを設置し、近隣の方も使用してもらえるよう、表に看板も掲げている。


つづく環境
テーパーバケットの素材である、鉄は製造時やリサイクル過程で環境負荷が少ない素材であり、何度でもリサイクルが可能なので、エコマテリアル(優れた特性・機能を持ちながら、より少ない環境負荷で製造・使用・リサイクルまたは廃棄でき、しかも人に優しい材料)。また、鉄板は鉄板でも、錆びに強い鉄板を使用しており、錆びにくいという事は長持ちする、長持ちするという事は環境に優しいという思いも込めて製造している。


つづく暮らし
飽きのこないシンプルなデザインであり、強度・実用面での工夫に加え、製造上・流通上の合理化も図っている点が、長く続いている理由のひとつ。錆びに強い鉄板を使用する事で腐食しにくく、胴体のリブと継ぎ目のないフチで強度を増している。また近頃は、ゴミ箱としてだけではなく、物入れとしての利用も増加。ゴミ箱以外の価値を見出してくれる方が増えている事も、商品の人気が続いている理由だと考えている。


お気に入りのポイント
昔ながらのスチールのグレーの無骨なカラーに惹かれて購入しました。一人暮らしの部屋なので小さいサイズで目立ちすぎず圧迫感もなく丁度良いです。最初はオフィスや学校で使ってるイメージでしたが、木製品とも相性が良く部屋のどこに置いても違和感なくスッと収まるのが嬉しいです。(小澤健太/商品部)



元々が、ゴミ箱ではなくてバケツだったものから持ち手を外してゴミ箱として転用したのが始まり。と、いうストーリーが気に入って、愛用しています。「ゴミ箱のような」デザインだからこそ、ゴミ箱としての主張がなくほどよい存在感で部屋に馴染むんじゃないでしょうか。家具とのバランスも取りやすくて気に入っています。(阿部里奈/D&DEPARTMENT東京店)



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