富士山の麓にある富士吉田。そこには、富士山へ参拝登山に向かう人の往来や、江戸時代から続く機織産業に関わる人々の暮らしから、富士吉田ならではの地域文化が育まれてきました。
今回、富士吉田市が主催となって取り組む、旅をしながら働く暮らしのあり方を模索する「SHIGOTABI」を応援し、トークと食事会を組み合わせたイベントを現地で開催。
11月21日(土)と28日(土)の2週に渡り開催されたイベントの模様をお伝えします。
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SHIGOTABIトーク
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トークの進行を務めるのは、日本各地の機織産地で保存されていた在庫を活かしてものづくりを手がけ、富士吉田で毎年開催されるハタオリマチフェスティバルにも参加経験のある、重松久恵さん(D&DEPARTMENTファッション部門ディレクター)。
第1回目の11月21日(土)は、「ハタオリと旅と私」をテーマに、片岡朋子さん(Tokyo新人デザイナーファッション大賞事務局ディレクター)と家安香さん(デザインディレクター、Edelkoort East株式会社 代表取締役)をゲストにお迎え。
ファッション産業の前線にいるお二人に、ご自身のファッションやライフスタイル、また機織関係者にとって富士吉田がより魅力的な街になるためのヒントを伺いました。
会場は富士吉田市内にある「SARUYA AIRTIST RESIDENCY」。
(左:重松久恵さん、中央:片岡朋子さん、右:家安香さん)
第2回目の11月28日(土)は「地域産業と自然とくらし」がテーマ。ゲストに、藤枝大裕さん(事業プロデューサー)と坂本大祐さん(クリエイティブディレクター、合同会社Officeキャンプ代表社員)をお招きし、相馬夕輝(D&DEPARTMENTつづくをたべる部ディレクター)も参加しました。
移住や二拠点生活をして地域の活性化に取り組んでいる3名に、地域の人や行政の人たちとの関わり、自然の豊かな場所で生活するメリットとデメリット、そして富士吉田の可能性についてお聞きしました。
(左:相馬夕輝さん、中央:藤枝大裕さん、右:坂本大祐さん)
移住を検討中で各地を巡っている方が数組あって、トークのあとも、移住先を検討する上でのポイントなど、具体的な質問を投げかける参加者が多く見られました。移住や二拠点生活に対する関心度の高さが伺えます。
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富士吉田の街歩き
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どこへ行くにも徒歩で回れるほど、案外とコンパクトな富士吉田の街。食事会までの時間は、地元の方の案内で、街を散策することになりました。
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富士吉田をたべる会
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日本各地でつくり継がれてきた郷土料理をまなび伝えるd47食堂とdたべる研究所の料理人が富士吉田を巡り、富士吉田で暮らす方々の知恵を学んで、富士吉田ならではの食の風景を感じる料理を、コース仕立てでご用意させていただきました。
富士吉田には、神仏の力を求めて富士山へ登る人々が、かつては登山前に必ず参詣していたという北口本宮冨士浅間神社があります。
神社へ続く参道沿いには、登山参詣者に宿を提供し、心身を清める祈祷などを行う「御師」が営む旅館が数多く建ち並んでいたと言います。
かつては、上吉田の地域に86軒あった御師の家も、現在稼働しているのはわずか4軒。「幅広い人に御師や富士山信仰について知ってもらいたい」との想いから、400年以上続く御師の家をリノベーションし、カフェ&ゲストハウスとして営業している「御師のいえ《大鴈丸》fugaku wood works x hitsuki guesthouse & cafe」さんに、会場をお借りすることになりました。
富士山を伝う清らかな「湧き水」
御師の家の前には、必ず小川が流れています。この川を渡ることで、身を清めるという意味合いがあるのだそう。
思えば、富士吉田には、大小いくつもの川が通っています。普段生活している地元の方にとっては、それも“当たり前”なのかもしれませんが、初めて街を訪れる者にとって、その水量と美しさは圧倒的です。
場所により、水の味わいも若干異なるのですが、中でも「不動湯」の奥にある、杓子山からの湧き水の清らかさには、驚かされました。
食事会では、この水をウェルカムドリンクとして提供することに。1杯の水に、富士吉田の魅力が詰まっているように思います。お食事中も、「水がうまいね~」と何度もおかわりされる方が多くいらっしゃいました。
富士山麓で育てられてきた「馬」と「野草」
富士山へ荷物を運ぶため重宝されたのが馬。役目を終えた馬は、ありがたく捌かれ、普段の食卓に上りました。牛や豚、鶏よりも身近だったといいます。
クセがなくさっぱりとした赤身肉に季節の地元野菜。涼しい山麓で育った日本のタイム“イブキジャコウソウ”を散らして。
地元で馬刺しを食べるときは、ごま油と塩、醤油と生姜などで味わう家庭が多いようですが、食事会では富士吉田ならではの食べ方を提案したいと生産者を巡っていたところ、「HERB STAND」とのご縁をいただきました。
火山灰を含んだ土壌と標高700mもある富士吉田では、肉厚で香り高いハーブがよく育ちます。富士山の自然の中では、山椒、クロモジ、カキドオシなど多くの野草が自生し、江戸時代には幕府に献上する薬草の採集地でもありました。
この地で、50種類以上のハーブを育てている「HERB STAND」の店主・平野優太さんは「富士山の水でハーブを育てたい」と、数年前に奥様と共に富士吉田に移住されたそうです。
富士参詣登山者を送り出す「御師料理」
富士山に参詣する人たちの無事を祈願して、宿坊である御師の家で提供されてきた「御師料理」。富士山という神聖な場所へ立ち入る前に、身を清め、体力を養ってもらえるよう、地元のありったけの食材を使ってもてなしたといいます。
50年前に「筒屋」に嫁いできたという女将・小澤恵美子さんは、先代のお母様に料理を教わり、今も腕を振るい続けています。
食事会では、7月1日の開山祭で神饌として供えられる「じゃがいもとひじきの煮物」をはじめ、恵美子さんに教わった「かぼちゃの酢の物」「昆布のさっぱり煮」「きんぴら」をご用意させていただきました。
私たちが体験した温かみを感じてもらえるよう、小皿は筒屋さんに。お盆は、古くから受け継がれてきた大鴈丸さんの紋章が入ったものをお借りすることにしました。
テーブルに、大鴈丸さんご夫妻や地元の方にもついていただき、料理の背景にある御師文化についてお話いただく時間も。「料理の意味を知りながら味わうことができてよかった」。「地元の方の話を聞きながら食事ができてよかった」といった声が聞かれました。
ハタオリの街で生まれた「吉田のうどん」
小麦が常食だった富士吉田で、富士講で街を訪れる人やハタオリ産業で働く忙しい人たちに振る舞うお昼ごはんとして生まれたのが「吉田のうどん」。当初は専門店舗などなく、民家を解放していたとも聞きます。看板や暖簾も掲げない店舗も多く見られるのは、その名残だそうです。
甘辛く煮た馬肉やキャベツ、味噌と醤油で味を整えた出汁、コシの強い太めのうどん。
吉田のうどんを特徴づける辛味調味料「すりだね」。基本の作り方や材料はほぼ同じでも、家によって、店によって、全く違う味わいがある。
「吉田のうどん」を何軒も食べ歩くなか、原木椎茸農家のお母さんのお宅を訪ねると、「寄って行って!」とお声がけいただき、手打ちうどんをご馳走になりました。これが、お店で食べるいわゆる「吉田のうどん」に比べて、柔らかくつるつるとした優しいうどん。
かつて富士吉田では、うどんは男性が打つものだったそうで、だからこそ、力強いコシと太さが特徴になったと言われています。そうした謂れも伝えたいとの想いから、今回の食事会では、地元製麺所によるコシの強いうどんと、お母さんに朝から打ってもらったうどん、2種類をご用意させていただきました。
湧き水で淹れるクロモジのハーブティー
デザートは、地元蔵元「丸甲味噌」の味噌を練りこんだケーキに、白あんクリームを添えて。澄んだ空気のなか、さっぱりと食事を終えていただけるよう、クロモジを使ったHERB STAND監修のSARUYA HOSTELオリジナルブレンドティを、富士の柔らかな湧き水で淹れました。
機織りが盛んだったころ働く方々のために炊事を受け持つ男性のうどん、家族のためにつくるお母さんの手打ちうどん、富士山へ参拝する方々のための御師料理。富士吉田でつくり継がれてきた食事には、それを食べる方への思いやりが込められているのだと感じました。
入り口では、富士吉田でかつて作られた生地を使って製作した「FROM LIFESTOCK」のトートバッグなども、販売させてもらいました。
富士山の麓では、その恵みを受けて暮らす人々が、その魅力に引き寄せられて訪れる人々を温かく受け入れ、この地で続いてきた文化を継承しながら、またその先へ繋いでいく。そうした循環が、続いているように思えました。
「SHIGOTABIトーク in 富士吉田&富士吉田をたべる会」にご参加くださった皆さま、生産者の皆さま、「御師のいえ 大鴈丸 hitsuki guesthouse & caf?」さま、「筒屋」さまに、心より感謝申し上げます。
富士吉田市では、この先もSHIGOTABIによる様々なプログラムを予定しています。ご興味のある方は、ぜひこちらをご覧ください。