原型モデルは工場で使用される作業灯
誕生
アメリカに視察旅行に出かけた初代社長が、現地で見た作業灯を輸入して研究した事が始まり。今では家庭やオフィス用のアームスタンドの代名詞ともいえるZライトだが、始まりは工場で使用する局所照明としての開発でした。工場や作業場などでは、全体照明のほかに局部照明が求められるそうです。当時の作業スタンドは卓上用、壁付用、天井用と用途別に分かれていたものの、現場では照度不足による事故が起きてしまう事が課題だったそうです。手元をしっかり照らせて、作業能率を上げる、手元作業の照度不足を解消すべく局所照明の開発を構想し、いくつかの特許を取得。光源の位置が自在に変えられ、丈夫で壊れにくく、操作が簡単な作業スタンド「山田式Z型作業スタンド」が1954年に誕生。現場の要求をすべて満たす画期的な製品となり、5本のスチール製角パイプを組み合わせた主軸と4本のパントグラフ式スプリングにより、全体は360度自由自在に動き、好きな位置で止められる。光源自体も上下左右に幅広く回転可能。電源コードがパイプの中を通っているので安全性も高い。さらにクランプ(取付座)を変更することによって、机の上や壁面など様々な場所で利用する事が可能となった。価格が比較的安かった事もあり、山田式Z型作業スタンドは、製図、精密機械加工、組み立て、検査などの作業用ライトとして、瞬く間に人気商品となった。これ以上のモノは存在しないという意味で、アルファベット最後の文字である「Z」を起源とする「Z-Light」となった。以降、発売から66年、こだわりを持って生産を続けてる。
営業方法の工夫
販売店への営業方法に関しても、Zライトはユニークな手法が取られていた。カタログを見て注文を取るというのが当たり前の照明器具業界で、Zライトに関しては営業担当者が全国の小売店をひとつひとつ巡回していく、という売り方だった。それまでの販売店は実際の商品を見る事なく、カタログの写真を見て注文するというのが一般的だったのに対して、巡回販売は全く違っていて、Zライトを車に積み込んで小売店を訪問し、店頭展示をして直接売っていく。実際に商品に触れる事が出来るので小売店にもメリットがあり、この巡回販売によって、小売店とのパイプは確実に太くなった。
当時では珍しいテレビCM
Zライトは60年以降の高度経済成長と共に、販売数を伸ばしていき、学習スタンドや、工場用、オフィス用としての需要拡大に成功した。販売元である山田照明は、1970年代半ばにテレビCMを打っている。俳優を起用し、Zライトの知名度アップを図る戦略を実施。タレントを起用した印象的なCMをオンエアし、さらなる告知効果を狙った。ここまでコストをかけて宣伝するのには、次々と出てくる類似品対策という目的もあった。
高い実用性とデザインの両立
一見似たような形であっても、Zライトはそうした類似品とは全く違っていた。まず、部品点数が圧倒的に多い。丈夫に出来ている事で耐用年数が類似品と違って長く、30年以上も前に製造したモデルの修理を依頼する人もいるそうです。オリジナルが工業用ライトという事もあり、商品構成上の必要最低限の機能美であったり一次的な流行には左右されないようなZライトの基本デザインは極めてシンプル。大きな構成要素はセード、アーム、ランプの3つ、ランプは白熱灯か蛍光灯の2つしかない。70年代以降、Zライトは通産省グッドデザイン認定をはじめ、世界的に最も権威あるデザイン賞のひとつである、ドイツの「iFデザイン賞」を次々と受賞する。製品に対する評価は、揺るぎないものとなっていった。洗練を極めたといった印象のシンプルデザインが特徴で、これを会社で使っているという人も多い。実際、今でもデザイン事務所や建築事務所ではよく見かける。D&DEPARTMENTのオフィスでも使用している。
つづく産業
Zライトを製造/販売している山田照明は1946年に創業した照明専業メーカー。Zライト以外にもオフィスやホテル、住宅等幅広く手掛けており、ただ空間を照らす機能だけでなく空間をつくる表現方法として、人と空間をより豊かに結びつける生活デザインの要素としてあかりの役割を見つめてきた企業。Zライトは高度な実用性と優れたデザインを武器に、ポジションを守り続けてきた。そこにあるのは、真似される事はあっても、真似する事は決してない、オリジナリティに徹するという姿勢。誕生から66年、創業者が願ったように、Zライトは「究極のスタンド」に一歩一歩近づいている。本物が求められる時代だからこそ、Zライトが注目されている。
つづく暮らし
Zライトシリーズはロングセラーアイテムが多いのが特徴です。「スムーズな動きのアーム」「目に優しい光」など使う方が心地いいと思える工夫が詰まっており長く使い続けるユーザーも多く、支持されている。「いつまでも飽きないデザイン」、「快適な使い心地」が長く続く商品のポイントだ考えている。光源は、白熱電球、蛍光灯、LEDへと進化していことで時代に対応している。Zライトは一般的なデスクライトで使用する部品の倍近い数の部品を使用し製造しており、1台1台人の手によって組み立てられている。長年支持されているスムーズな動き、思うように止まるアームはこの部品の多さと人の手による組み立てが実現している。耐久性が上がれば長く使用する事が出来、修理対応も承っている。結果廃棄等の環境負荷の低減にもつながる事と考え取り組んでいる。「工場や作業場で評価される製品なら、家庭用としても優れているはずだ」という考えから、一般向けに販売されるようになったZライトですが、業務用製品を多く扱うD&DEPARTMENTとしても共感する部分は多いと考えます。
お気に入りのポイント
Zライトの原型モデルが復刻されました。D&DEPARTMENTのオフィスでデスク用として、ずっと愛用していたモデルが廃盤になってしまい、頻繁に起こる我が社の席替えのタイミングで、いつも最後に悩まされてきた問題がついに解決されました。綺麗なお椀型のシェードから照らされる優しい光と指の力だけですいすい稼働するアームは、ロボットを操っているようで無駄に微調整をしていじってしまいます。デスクに取り付けるクランプの進化、LED電球や現代生活に合うように全体をコンパクトにリモデルしながら全体の雰囲気は当時のモデルそのままを再現してます。一番好きなポイントは今時のタッチパネルとかではなく、指先でスイッチをON/OFFした時のあの感触と安心感がたまりません。単機能の潔さ。進化するロングライフデザイン、オススメです。(斉藤/D&DEPARTMENTコーディネーター)
Zライトの商品ページ