71: 祈りのデザイン

民藝に興味が湧いて、それが「宗教美学」であることを知り、長らく「民藝」というものを勘違いしていたことに、我ながらびっくりなのですが、それよりも祈りのデザインにとても関心があったので、ものすごくしっくりと今、しています。

手仕事とか言ういわゆる「一つ一つ丁寧に」と言う世界ではなく、中量産の産地のものづくりにおいて、分業でひたすら流れ作業で絵を描くそれの中に、美を見出すなんて世界だったわけです。「いい形つくってやれ」とかじゃなく、とにかく急いで、でもちゃんと描く。”慣れ”というか、”勘”というか、”技”というか・・・・・。それはまさに「心の状態」であって、運動神経のようにパッと何も考えずに描けるわけで、それが「美しい」というんだから、柳宗悦って人はすごいなぁと思うのです。

先日、稚鮎を食べるだけのために富山に行ってきました。もちろん、僕の企画ではありません。妻が稚鮎が大好物で、いつもSNSに美味しそうなものばかりを上げている桐山(登士樹)さんのをみて、美味しそーとか、ずるいーとか書き込んでいたところ、「では、今年から行くか」と、なったようで、桐山さんと言えば僕の恩師。お供せずにはいられずって感じです。

いつもの井波のベッドアンドクラフトのメンバーが二次会に集まって(くれて、と、書こうと思ったのですが、僕のために集まった訳ではなく、みんなでワイワイ飲みたかった訳で)、その時、僕が随分前ですが、井波で彫刻師の前川大地さんの太子像を購入したその話になって、翌日、それを見ようとみんなでお邪魔したのでした。改めて思うのですが、ものの形もそうですが、先ほどの民藝の運動神経のような美しいものづくりの話ですよ。人形の表情なんて、それに近いと思いました。大地さんに聞くと、やはり無心で一気に表情を彫刻刀で彫るそうで、直径にして3センチくらいの頭の大きさですから、目や鼻がどれほど小さいか。その表情を彫ることこそ、祈りのデザインだなぁと、思った訳です。

僕はどんな職業の人にも、この「祈りのデザイン」ってあると思います。無心でできた美しささえ感じられるもの。いかがですか?