昆布出汁文化を伝える「大阪 こんぶ土居」

天然から養殖に。
人の手をかけて悪くなったものは、人が関わり変えていけるはず。

北海道函館で良質な真昆布の生産地として知られる白口浜(しろくちはま)。七浜で構成される白口浜の中でも、川汲浜(かっくみはま)の天然真昆布は、上品で強い旨味があり、享保年間より献上品として朝廷や幕府に納められていた歴史を持ちます。今、その生産環境に大きな変化が生まれています。


大阪の下町、空掘商店街に店舗を構える「こんぶ土居」。

大阪の昆布出汁文化を伝える「こんぶ土居」さんは、川汲浜の天然真昆布を仕入れ、熟成過程を見定め、良質な出汁昆布だけを料理人や消費者に届けてきました。2019年に入り、現代表の土居純一さんから店に一本の連絡が入ります。

「天然真昆布の不作が続き、養殖真昆布へと切り替えをすることになります」。

2019年末から取り扱いの始まった「栽培二年」真昆布。

現在昆布の生産量は、30年前に比べるとその半分に落ち込んでいます。食生活の変化による昆布の消費量の減少、生産者の急激な減少などが大きな原因ですが、加えて、昨今は、地球規模の水温上昇や、山から海へと?つながる浜周辺の環境の変化(森林伐採や、沿岸部に道路が敷設されるなどの人的要因)が、生態系への影響を与え始めているのだそうです。

土居純一さんは、美味しいものを食べられるのは、素材を作っていただいている農家や漁師の方のおかげだと考え、毎年漁の時期に手伝いをしていらっしゃいます。

2019年の白口浜真昆布の収穫量予想では、天然昆布が占めるのはたった1.1%。昆布は2年生の海藻で、本来は2年育成した方が味が良い。しかし、二年養殖は4.5%に過ぎず、1年で回転率をあげて収穫する促成養殖が全体の94.4%を占めているのが現実です。同じ面積で収量を上げるならば、1年で毎年収穫をする方が確かに高効率。土居さんは、近年の天然真昆布の不作が続く結果、良質な二年養殖昆布の販売を始めました。

渋谷ヒカリエのd47食堂では、開業時から土居さんの昆布を使っています。「こんぶ土居」のレシピ本出版の際には「大阪こんぶ土居定食」を提供しました。

土居さんは「食の学校」と題した“良い昆布とその食文化を伝える”授業を、先代から続いて行なっています。実際に生産地に足を運び、将来昆布生産に関わっていく現地の子供たちに伝える活動です。また、生産地の高校生を大阪で受け入れ、社会学習となる研修を行なっています。

白口浜真昆布が、社会と、世界と、どう?がっているかをこれからの若い世代が感じることはとても重要です。なぜなら、いつの時代も、これからの社会を変えていくのは若い人たちだから。若い力で、世界中の情報を駆使すれば、白口浜の状況を解決できる糸口も見出すことができるかもしれません。

「地球規模の自然変化は人間にはどうしようも無いこともあるけれど、人の手をかけて悪くしてしまったことについては、人の手で解決できることもあるはず」。

土居さんが生産者と共に始める、真昆布の革命を応援していきたい。

(『d news No.1』p.28-29より抜粋)

●店舗情報
こんぶ土居Web / Instagram
住所 大阪市中央区谷町7丁目6番38号
TEL:06-6761-3914 FAX:06-6761-7154
営業時間:9時~18時 定休日:日曜・祝日・各月第1月曜日・(年末年始とお盆休み)

●「こんぶ土居」の昆布は、こちらからご購入いただけます。


d47食堂の「日本の出汁」1 昆布とかつおぶし ¥2,600(税込)


d47食堂の「日本の出汁」2 昆布といりこ ¥2,300(税込)


〈こんぶ土居〉昆布のいろいろとレシピセット ¥3,600(税込)

●この記事が掲載されている『d news No.1』について

¥2,000+税

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