寿司の原点は、魚を保存するために、塩と米と一緒に漬け込んだ「熟鮓(なれずし)」だとされています。米による甘みや発酵による酸味はそのままに、砂糖と酢を使った「早すし」が生まれると、つくる手間と時間が減ったことで、多くの地域に広まります。土地ならではの魚や野菜と組み合わせて、様々なかたちの寿司が生まれました。
滋賀「鮒寿し」
『d design travel 滋賀号』で訪ねたのは、高島市にある老舗鮒寿し店「魚治」。琵琶湖で獲れるニゴロブナを丁寧に処理し、先々代から受け継いだ木桶で発酵させた鮒寿しに、寿司の原点を学びました。
秋田「ハタハタ寿司」
年の瀬に海岸に押し寄せるハタハタを塩漬けにしてつくる秋田の郷土寿司。米と麹を使った飯ずしの一種で、石川や富山のかぶらずしに近く、かぶやにんじんなどの野菜とともに桶に詰め、重石をのせることで、乳酸発酵した味わいが特徴です。
奈良「柿の葉寿司」
山深い吉野地方に伝わる郷土寿司。沿岸部で塩漬けした鯖が届くと、薄く切ってごはんに乗せ、手近に豊富にあった山柿の葉に包んで重石をかけ、熟成させて寿司に仕上げました。保存食としての名残がある、寿司のかたちです・地元のお母さんに包み方を教わりましたが、これがなかなか難しい。
高知「金時豆の押し寿司」
高知には、季節を告げる回遊魚にその季節に採れた柑橘を絞って楽しむ酢みかん文化があります。寿司にも、醸造酢の代わりに柑橘を使うのが特徴です。
見た目は千差万別ですが、どこも共通しているのは、お祝いの日を彩るひと品としてつくられてきたこと。みんなで分かち合えるよう大きな寿司が多いのも、郷土寿司の魅力です。今月は、47都道府県で出会った「寿司」にまつわる郷土料理をご用意します。
▼今月のおひるごはん「寿司」1,700円(税込)
〈内容〉
「ばらずし」
京都で日本海に面する丹後地方に伝わる家庭の味。サバがよく獲れた頃、ごはんをかさ増しするため、サバのおぼろを混ぜ込んだのがはじまり。今ではサバ缶を使う場合がほとんどで、その手軽さもあってか、地域でよく食べられている郷土寿司。
「田舎寿司」
新鮮な魚が手に入りにくい、高知県の山間の地域に伝わるにぎりずし。しいたけ、みょうが、こんにゃくなどの食材で作られる。様々な柑橘が獲れる高知ならでは、すし酢にゆず果汁を使うのと、刻み生姜を入れるのが特徴。
「豆煮」
甘く煮た豆を寿司に混ぜ込む地域は多く、大分の「かちえびちらし寿司」や徳島の「ばらずし」には、金時豆の甘煮が入る。
「あおさの茶碗蒸し」
京都の丹後地方で行われる秋祭りでは、ばら寿司と茶碗蒸しを一緒に食べるそう。
「梅酢の唐揚げ」
早すしに欠かせないお酢。dたべる研究所では、梅干しを作るときに出る梅酢を使用。紅生姜の色付けにも、唐揚げの下味として使ってもおいしい。
「山菜を使ったひと品」
魚が手に入りにくい地域では季節に採れる山菜を使った寿司も多い。長野や新潟では、クマザサを使った笹寿司が知られている。
「じゃこのせサラダ」
酢飯と混ぜ合わせられることも多いじゃこ。高知県大豊町では「銀不老(ぎんぶろう)」という黒豆とジャコを混ぜ合わせる寿司もある。
〈店舗情報〉
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アクセス 東京都世田谷区奥沢8-3-2 1階
電話 03-5752-0120
定休日 火・水曜日
店内利用 12:00-18:00(L.O.17:00)
テイクアウト 12:00-19:00(L.O. 18:00)まで
カフェ 15:00-17:00
*15:00-17:00はお食事とテイクアウトをお休みして、カフェメニューのみ提供となります。