創業メンバーの斎藤善与(ゼンヨ)と仕入れをしたり、店内レイアウトを考えている時によく口にしていた事があります。「いつか、USEDのYチェアが買い取り、集まる店になったらいいですね」と。Yチェアはご存知の通り、人気でかつロングライフデザイン。流行だから買うという方が本当に少なく、一生物として買われる。だから中古で出回るという事が本当に少ない。ロングライフデザインのお手本であり、購入される方も、本当に意識が高い方が多い。値段はちょっとしますが、やはり、「長く使い続けられる」という価値を知っている皆さんなので、多少無理をしても生活の中に取り入れていかれる。本当に気持ちのいい家具で、Yチェアのような椅子って、そんなにないとおもいます。
家電って特に短命で、どのメーカーも「長く使って欲しい」なんて思って作っていない。どんどん新商品が出て、どんどん家電店でセール、型落ちになって、最新型だけが価値があるようなそんな世界と全く違う世界にYチェアはいる。たまに黒く塗ったのとか出てくるけれど、そんなものはロングライフデザイン好きは見向きもしない。ド定番のシンプルな仕上げのものを一生使う。そして、一脚づつ増やしていく。その気持ちの豊かな感じは、他にない。
先日、斎藤から「Yチェアが60脚出てきました」とメールがきて「いよいよ、きましたね」と。20年越しの我々の夢が叶ったわけです。
予算の都合で20脚をまず買取りました。しかし、我慢ができません。何ができないかというと、この日を待ち望んでいたその気持ちが、20脚ではなく、すべて買取り、その景色をお客さんと一緒に楽しみ味わいたかったのです。そう斎藤に言うと、USED担当の松井が全部買い取ってくれました。60脚。いや、何脚でもいいんです。それがボロボロでもよかった。どんな状態のものでも偽物じゃなければ。とにかく20年立ってこの場所にYチェアが集まってきた。
その気持ちはそっくりそのままに、コロナウイルスもあり閉めていた店を、みんなの協力で特別に予約来店してみてもらう会として、作り上げることができました。初日に12脚。翌日曜日に15脚。どんどんなくなっていきますが、長く使われた様子のある、かなり経年変化した60脚は、彼らの存在がゆえに捨てられたりする事なく、きれいに残ってここにある。それを「修理を楽しみたい」「楽しめる」「手入れが楽しみ」と言って買ってくださるうちのお客さんに、本当に拍手したい。
Yチェアは私たちに教えてくれます。「ロングライフデザインは高価で流行にも背を向けた売るには手間のかかるもの。だけど幻想なんかじゃない。良いものはこうしてみんながその価値をしっかり育めば、ずっと残るんだ。その価値観は日本の生活の質を変えていくんだ」と。