浄法寺漆のふるさと「二戸」を巡る旅に行ってきました。〈 前編 〉

7月13日(土)・14日(日)の2日間、浄法寺漆のふるさと、岩手県二戸市を巡る旅に行ってきました。なぜ「ふるさと」かと言いますと、岩手県二戸市は国産漆の一大産地。漆の自給率がわずか3%という日本で、その約70%を占める全量が二戸地域で採集される浄法寺漆なのです。日本の漆文化を守るため、技術の継承とつくり手の育成、継続的に生産できる環境づくり、漆の魅力を多くの方に知ってもらうための普及活動に、地域が一丸となって取り組んでいます。今回のツアーでは、漆にまつわる歴史を学び、実際に漆掻きや漆塗りの技術を体験、その土地の人々との交流を通じて、二戸に根付く日本の漆を守り継ぐ文化を体感してきました。

〈 前編 〉では、1日目の様子をご紹介します。

集合場所の二戸駅は、東京駅から新幹線で約2時間40分、青森県との県境近くにあります。各地から集まった参加者のみなさんと合流し、d design travel の旗に導かれ貸切バスへ。車内で簡単な自己紹介をした後、二戸市役所の工藤さんに二戸のことを伺いながら、最初の目的地、いぶきの里へ向かいます。

食の匠 三浦静子さんと小野知子さんに、郷土料理「へっちょこ団子」と「柳ばっと」の作り方を教えていただきました。昼食には、特別に用意していただいた郷土料理の数々が並び、二戸の豊かさを味わい、この地に雑穀食文化が根付いた歴史や、名前の由来など、二戸の暮らしに思いを馳せながら学ぶことができました。
>> たべる部レポート|d食堂 in 二戸(1)へっちょこ団子づくり体験

たくさんのおもてなし料理をいただいて満腹になった後は、岩手の特産「短角牛」の放牧を見学に稲庭高原へ。

青い空と牧草、短角牛の赤茶色のコントラストが美しい、とても気持ちの良いお天気の中で、二戸の畜産業について浄法寺牧野組合連合会の斎藤さんからお話を伺いました。

広大な自然の中でのびのびと過ごす短角牛の様子は、春から秋にかけて見られる二戸の風物詩です。牛追いの技術を間近で見ることができ、その迫力に参加者のみなさんも大興奮。見学のおともには、二戸のコーヒースタンドOli-Oliのアイスコーヒーを漆器でいただきました。

続いて、お昼にいただいた雑穀の現状を学びに、雑穀生産者上野さんの圃場へ伺いました。昔からこの土地は、「やませ」の影響でお米が育ちにくい環境だったため、雑穀食文化が地域の人々の生活を支えていました。

今では広く知られるようになった雑穀ですが、もともと生産者が少ないこともあり、農薬がなく、雑草にも弱いため、生産にとても手間がかかります。中山間地で雑穀栽培に適した傾斜が多い二戸では、ヒエ、アワ、イナキビ、タカキビといった多種類の雑穀が栽培されており、生産者による丁寧な栽培管理によって岩手の雑穀食文化を支えています。

二戸駅近くにある福田繁雄デザイン館は、二戸にゆかりのあるデザイナー福田繁雄氏の立体作品などが、日本で唯一、常設で展示されている施設です。今秋開館20周年を迎えるにあたり、「福田繁雄の迷宮案内」と題した三本立ての企画を開催中で、第一弾の「ポスター編」を鑑賞し、日本のエッシャーといわれる所以を体感しました。

宿泊先のおぼない旅館でいただいた夕食には、150年前の漆器が登場。独特の雰囲気と若女将の人柄、美味しいお料理と温泉にみなさん大満足。若女将による「戸(へ)」話をはじめとした地名にまつわるお話も興味深かったです。二戸を訪ねた際は、ぜひ泊まっていただきたいお宿です。

豪華な夕食を堪能した後は、10日ほどしか見ることができないというヒメボタルを鑑賞しに折爪岳へ。今年はお天気の影響で見られる数が激減。現地に行くまで出会えるかわからないという不安な状況でしたが、無事300匹ほど見ることができました。

そして、1日目の締めくくりは、待ちに待った?漆バー!地元の方も交えながら、二戸で唯一の酒蔵「南部美人」の代表銘柄を5種類、漆器でいただきました。D&DEPARTMENTの裏話も飛び出し、ツアー中とはまた違った交流の形で、集う人々の距離がぐっと近くなるのを感じた夜となりました。
>> たべる部レポート|d食堂 in 二戸(2)漆器で地酒を愉しむ

食文化を中心に二戸を巡った1日目。風土や文化を伝える匠と、次の世代に受け継ぐ若手生産者の姿が印象的で、生きるために知恵を出し合い、創意工夫してきたことで根付いた食文化を、この土地の記憶としてこれからも受け継がれるよう、応援していきたいと感じました。

>> 〈 後編 〉へつづく