山が多く、湿度が高い気候であることから漆器生産に適した日本では、江戸時代以降、各地の風土や文化を活かした漆塗りの工程や装飾の技術を持ち、その産地を全国に増やしてきました。今回の特集では、漆器産地の中から特徴あるものづくりを行う、岩手県の「滴生舎」、福島県の「めぐる」、石川県の「輪島キリモト」の3社をご紹介します。
人手や材料不足などの問題を抱えながらも、次の世代へと技術を繋げていくために、それぞれの地域の技法や素材を活かし、今の作り手たちにより進化し続けている漆器は、現代の私たちの暮らしの中にも馴染み、扱いやすく、毎日の食卓で使いたい器です。忙しい普段の生活に、漆器を使うことで自然と生まれる丁寧な時間。お手入れなどの少しの手間も、使う楽しみへと繋がります。
会期中は、特別に工程見本や漆掻きの道具などの展示も行います。3つの地域から生まれたそれぞれの漆器を、実際に見て触れて感じる機会になればと思います。
岩手県 「滴生舎」
日本一の漆産地である岩手県二戸市浄法寺町にある「滴生舎」は、「浄法寺塗」の工房を併設し、「浄法寺漆」を使った漆器や漆芸品を展示販売している施設です。重要文化財の修復に用いられ、手に入れることが難しい貴重な「浄法寺漆」を使用し、私たちが毎日食卓で使うための漆器を製作、販売しています。「滴生舎」で紹介している漆器のほとんどは、布着せをせずに下塗りから塗りと研ぎを何度も繰り返すとことで、ふっくらと丈夫に仕上げており、手に口にしっとり吸い付くような感触も特徴です。
https://urushi-joboji.com/news
福島県 「めぐる」
漆器の作り手と使い手のつなぎ役として、漆が持つ魅力を伝えながら、現代の暮らしに活きる商品づくりに取り組む「漆とロック」が運営。暗闇のソーシャル・エンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドとして活躍する全盲の女性たちの“特別な感性”と、福島県の伝統工芸である「会津漆器」がコラボレーションして誕生した漆器「めぐる」は、心地よい肌触りや口当たり、そして抱き上げたくなる優しいかたちが特徴です。今回は、“とつきとおか”で迎える「めぐる」の三つ組椀「水平」「日月」の年に一度の展示受注会を店頭にて特別に開催。さらに、新作「めぐるの匙」の受注受付も行います。
https://meguru-urushi.com
石川県 「輪島キリモト」
石川県輪島市にて、200年以上「木と漆」の仕事に携わってきた桐本家。現在は「輪島キリモト」として、木地業を生業にしながら、木地から漆塗りまでの一貫生産を行い、漆の器、家具、建築内装材など様々な木製品作りを続けています。表面がザラッとしたマットな仕上がりの「輪島キリモト」独自の技法「蒔地技法」を使用した漆器は、表面がガラス繊維の様な強い硬度を持っており、金属のスプーンを使っても傷つかない扱いやすさも特徴です。
http://kirimoto.net/about/