今、心鎮めて
次に向かうために
「浄夜」をみんなで聴きたくて。
ここ10年程前から民謡に強く惹かれるようになりました。東京で30年以上、デザインの仕事に関わり、ほぼ業界内の序列を気にしながら自分の作風だけを考えたような仕事をしてきました。その反動か、いつしか日本の伝統工芸に目がいくようになり、そういうものこそ「デザイン」と呼んだ方がいいと思い始めました。
そして、民藝運動が再注目されていることを気にするようになり、資本主義な経済ではない、もっと健康的な営みをしないと、地球も人の心も破裂してしまうよ、と、そうしたものたちが言っているような気がしていたある日、石垣島のとあるバーで流れていたこのアルバムと出会いました。9年程前のことです。
僕は漠然と気になっていた沖縄への気持ちの中に、このふたりの音楽が何かの答えのようにスッと入ってくるのを感じ、それからしばらく経って沖縄にアパートを借り、一年の4分の1程を過ごすようになりました。そして、何かあると、このアルバムを人にプレゼントするようになり、日々の雑然とした自分の生活を整える意味でも、毎朝、この「浄夜」を聴くようになりました。そして、いつの日か、このふたりと会うことが叶ったならば、もう一度、このアルバムを曲順通り、再現するようなライブをしてもらいたいと、お願いしようと思っていました。ついに、その日がきました。折しもこのアルバムが誕生した10年目。僕は新良幸人さん、サトウユウ子さんに会えたのです。
日々、様々なことが複雑に起こる現代。目に見えないウイルスとも戦わなくてはならない今、このタイミングに、このアルバムに込められた二人の思いにぜひ、出会って欲しいと心から思っています。
沖縄から生まれた「浄夜」が、これからも名作として人々の心をまさに”浄める”作品として聴き継がれていきますように。
デザイン活動家
D&DEPARTMENTディレクター
ナガオカケンメイ