華・美術館
地球の歴史45億年に比べれば、人類の歴史300万年はほんの一瞬です。そして、そのわずかな時間に、人類は想像力を駆使して輝かしい文明を築いてきました。この想像力は、地球上の他の生き物とは異なる人類特有の大脳の機能によるもので、あらゆるものを創作し、未来を構築することさえ可能です。デザインもまた一種の想像力で、単なる職種や技術ではなく、絶え間ない想像力によって活性化され成長していきます。しかし長い間、人々はデザインに対して深い誤解を抱いてきました。それは消費文化や物欲の隆盛に関連しています。ローエンドの「デザイン」は複製物となり、消費欲求を刺激し経済成長を促す道具として、意図的あるいは無意識に、多くの社会問題や環境問題を引き起こしてきました。この度、華・美術館で開催する「ロングライフデザイン」展は、この誤解を解き、社会にデザインと生活の本質を再考してもらうための試みでもあります。
デザインとは、物質ではなく精神を創造することです。「ロングライフデザイン:思考と実践 2000-2020」展で、来場者が目にするモノはすべて日常生活品ですが、私たちが伝えたいのは、これらのモノに浸透している精神です。展覧会、ミュージアムショップ、ワークショップ、出版物などを通して、これらのモノが長く使われてきた過程で「ロングライフ」の理念が生まれ、伝えられてきたことが、来場者の認識の中に構築されることを期待しています。本展キュレーターのナガオカケンメイ氏は、このように語っています。「ロングライフデザインを触発する特異点となるのは“時間”です。“時間”だけが私たちに幸せを与えることができ、ロングライフデザインは幸せへの道標となります」。同じく本展キュレーターの左靖氏は、中国でロングライフデザインの理念を掲げるために、D&DEPARTMENT 黄山店を設立しました。そして現地のロングライフデザイン製品を発掘し、出版物の制作やイベントなどを通じて、「ロングライフ」の理念を実践する手本を示しています。
中国初のデザインミュージアムである華・美術館にとって、デザインは常に重要で、また乗り越えたいテーマでもあります。デザインとは単一で固定されたものではなく、人々の生活の変化に合わせて絶えず成長し、新しい形になっていくものです。私たちはデザインの境界を切り開き、公共と社会につなげていくことを常に目指し、それがデザインミュージアムとしての意義であり使命であると考えています。振り返れば2018 年、華・美術館では「もうひとつのデザイン」と題した展覧会を開催しましたが、その時に語られた「もうひとつのデザイン」とは何かという問いの答えを、今日、受け取ることができました。時間は何も語らずとも、すべての問いに答えてくれるのです。