スタッフの商品日記 111 LAUAN SHELVES

どんな空間にも溶け込む徹底的に整えられた箱型の棚

LAUAN SHELVESは2010年からD&DEPARTMENTで販売している家具。竹島智子氏、真喜志奈美氏により共同設立(2012年、桶田千夏子氏入所)のデザイン事務所Luftのプロダクト。Luftの事務所で使用されていたのをナガオカケンメイが見つけ、販売したいと申し出たのがきっかけでD&DEPARTMENTでの取扱いが始まった。

誕生
2007年 Luftの展示会に際して、真喜志氏が考える形に竹島氏が素材やカラーを掛け合わせることで現在のLAUAN SHELVESの原型を発表。真喜志氏が以前から制作してきたラワン合板の家具にポリエステル合板の白を組み合わせた仕上げが加わることとなった。美しく連なったラワン合板の棚は好評を博したが、商品化されることはなかった。打診はあったものの、ラワン合板ではなくバーチ合板やシナ合板などの白く整った合板での製作を求める声が多かった為である。2000年初頭の日本ではラワン合板を使った家具が既成品としてはほとんど存在せず、建築の下地材として、又、収納内部に使われることが多かった。D&DEPARTMENTで商品化するにあたり、家具としての強度向上などの改良を加え、グレーとナチュラルの仕上げを追加するなどして、現在のLAUAN SHELVESが形作られていく。

LAUAN SHELVES 2007

LAUAN SHELVES 2009(D&DEPARTMENT TOKYOにて行われた展示会)


lauan shelves seoul 2009(ソウルで発表されたLAUAN SHELVES)


lauan shelves system 2010

LAUAN SHELVESの形や在り方はドナルド・ジャッド(1928 - 1994)の彫刻による影響を受けている。ドナルド・ジャッド作品の、余計な形を一切取り払った造形や連続性の美しさをLAUAN SHELVESにも見ることができる。徹底的にシャープな四角の箱にする為に、一般的な棚に付属しているような台輪もなく、板同士の接合はホゾで組み、背面はタッカー留めした上から再合板することで留め具の存在を消している。丈夫で緻密に作られており、大きさが均一で、重ねた時にズレが少ないのも特徴。LAUAN SHELVESのサイズはラワン合板を無駄なく使うために板材から割り出した寸法によって構成されている。表面を丁寧にサンディングをしたのち、ワックスで仕上げることで、ラワン合板特有の細かな毛羽立ちやささくれを防ぎ、滑らかな素材へと変容させている。生活を支える家具でありながら、単体としての美しさ、彫刻らしさを感じさせる。

素材としてのラワン
ラワン合板は基本的には建築用下地、家具の裏板の素材などに使用される建築材料。本来のラワンという木は家具材料として用いられていたものの、乱獲により激減。ラワン合板の材料としては、フィリピンやインドネシアなどの熱帯地域で育つフタバガキ科(広葉樹)の樹木全般が用いられ、赤みの強いレッドラワンや白みがかっているホワイトラワンなどが混在している。適度な硬さを持ち、加工しやすい為、家具やDIY等にも使用されるが、手触りが毛羽立っていることや木目に特徴がないことから家具などで表に使用されることは少なく、表面加工の下地や内側に使用されることが多い。真喜志氏がラワン材の魅力に気づいたのは、ソウルで家具製作をしていた頃。当時の韓国では、合板といえばラワン合板とMDF(木の繊維を合成樹脂と混ぜて再成型した板材)の2種類しか流通しておらず、家具の試作にはラワン合板を主に使っていた。ありふれた素材であったが、使い続ける内に、ラワン合板自体が持つ簡素な美しさのある東洋的な雰囲気に魅せられ、好んで用いるようになった。


徹底的にシャープに整えられた角と美しく仕上げられたラワン材

つづく仲間
LAUAN SHELVESをデザインした真喜志奈美氏は、沖縄生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科で家具デザインを学んだのち、ベルリンで6年間彫刻を学んだ。そのまま彫刻の道に進むことも考えたが、真喜志氏の作品を見たドイツのギャラリストや周囲の人々から、建築や家具をデザインすることが向いていると助言を受け、空間設計や家具デザインの道へ。帰国前に、ベルリン留学で出会った韓国の友人に誘われて立ち寄ったソウルで、半年ほどインテリアデザイン事務所に勤めた後、ソウルで友人とデザイン事務所を設立。家具デザインや空間設計、ソウルの大学でハングル語で教鞭をとるなど約5年間ソウルで活動していた。

Luft
2005年に武蔵野美術大学の同期である竹島智子氏と真喜志奈美氏により共同設立されたデザイン事務所。竹島氏は長く勤めていた(株)ID?Eを退所し、2001年に独立。内装設計を軸に活動していた。二人はそれぞれ別々の仕事をしながら、オフィスを共用する形で事務所を立ち上げた。事務所名のLuftは、ドイツ語で「空気」や「間」という意味を持つ。物と物との関係性や、空間的な間合いを大切にしながらデザインに取り組んでいる。2012年に桶田千夏子氏が入所、プロダクトデザイナーとしてキッチン用品や、テーブルウェアのデザインを行う。


左 Cooking&Serving spoon 右 Outline (product by 桶田千夏子)


Gallery Factory 韓国(product by 真喜志奈美)

つづくデザイン
2014年より真喜志奈美氏と桶田千夏子氏は拠点を、真喜志氏の故郷沖縄へと移した。沖縄での仕事も手掛けてはいたが、日本の各地やソウルへの出張も多かった。数々の店舗や住宅の空間設計に関わっていく中で、故郷沖縄の人にLuftのデザインを発信する場が必要だと考えるようになる。そして、Luftをまったく知らない人にも出会えるようにと、2020年那覇にLuft shopをオープン。沖縄をはじめ日本各地のメーカー、工房、作り手と制作している家具やプロダクトの紹介と共に、家具や空間の設計相談にも応じている。より地域と関わりを持ち、沖縄に根差した活動を続けていく。

Luft shop(? Shoji Onuma)

Luft shop店内

お気に入りのポイント
私にとってLAUAN SHELVESは憧れがあります。初めて見た時はラワン合板で作られたただの箱のような棚に感じられ、印象的な存在ではありませんでした。しかし、触れてみるとおよそ想像していたラワン合板と思えないほど滑らかに磨かれ、角はシャープに整えられた異様な四角さ。特に驚いたのはLAUAN SHELVESに物を入れた時に、LAUAN SHELVES自体の存在感が消えることです。家具らしいデザインの主張が少なく、まるで備え付けられていた棚や、空間の一部になったように感じさせます。綺麗に整った四角さが積み上げた時のズレを減らすことで、箱同士が最初から繋がっているかのように整えられる。結果、LAUAN SHELVESはどんな空間にも溶け込み、馴染んでいきます。

LAUAN SHELVESの商品ページはこちら