人に、暮らしにあわせて組み合わせる マルニ60のフレームチェア
座る人によって背もたれの高さを選べ、拡張(一人用から二人用へ)や分解も簡単なこのフレームチェアは、広島の株式会社マルニ木工で作られています。1シーターの幅65.5cmと比較的コンパクトなサイズで脚がすらりと長く、空間の抜けが良いので、しっかりとしたつくりながらも軽快な印象。3種類の木部と26種類のクッションから好きな組みあわせを選ぶことができ、パーツ交換も可能なため、長く使い続けられるのも魅力です。
マルニ木工の歴史
1928年に前身の「昭和曲木工場」が設立。どこよりも家具づくりの工業化を進めました。当時の日本は職人の手作業が当たり前だったのに対し、技術難度の高い木材の曲げ技術を確立させ、大量生産ができるよう工業化をはかっていったのです。
↑曲木技術を利用した椅子たち。左から113号(鉄道回転)、曲木椅子(銀行椅子)第1号、38号(別名サンパチ)
戦後は更に木材の人工乾燥技術の研究開発を始め、高度な木工加工表現を可能にします。猫脚と呼ばれる、これまでは一品生産で高級だった洋家具を、消費者の求める市場価格で供給し、日本の洋家具史上最大のヒットとも呼ばれる商品を生み出していきました。
↑1968年に発売された「ベルサイユ」
つづく技術
創業から「工芸の工業化」を実現するために培われた高度な木工加工技術は、現在のマルニ木工の商品にも繋がっています。猫脚が特徴的なヨーロッパ調の彫刻家具は、1966年から現在にいたるまで、ロングセラー商品としてマルニ木工のモノづくりの礎として作り続けられています。
↑2012年に発売された「アトリエ」。伝統と現代感覚を絶妙に融合させた製品。
そのほかにも、深澤直人、ジャスパーモリソンと共に、マルニ木工の強みを世界に向けて発表するMARUNI COLLECTION(マルニコレクション)というシリーズが2008年から発売されています。
↑MARUNI COLLECTIONの「HIROSHIMA」
創業から90年以上の老舗という地位にあぐらをかかず、「工芸の工業化」という変わらないものづくりの信念を伝承していきながら、次の世代に向けて常に未来を見据えているメーカーだと言えます。
フレームチェアの前身、「No.79」
1960年に今のフレームチェアの前進となる、「No.79」が発売されました。当時は戦後ということもあり、使える木材も少ない中、いかにシンプルなデザインで家具を作れるかが重要でした。そして、当時の日本では画期的だったノックダウン式のフレームと置き型のクッションを採用。持ち運びが簡単で様々な使い方ができ、快適な座り心地を実現した商品として人気を博したといいます。1970年には「No.79」という愛称から、横から見たときに広島県宮島の厳島神社の鳥居のように見えることから「みやじま」に変わり、1977年まで生産、その後いちど廃番となっています。
つづく原点
廃番になった「みやじま(No.79)」は、30年の時を経て2006年に「フレームチェア」として復刻します。デザインと構造はそのままに、より長時間座っても疲れにくいよう素材を改良されました。はじまりは、2006年に企業の原点といえる製品を廃番にせず、長くつくり続けるプロジェクトの60VISIONに参加したこと。マルニ60の商品は過去の“ものづくりの精神”を忘れないように、という試みなのです。その後、よりマルニ60の世界観を強化するためにサイドテーブルやスツールなど、企業のDNAを感じさせる「ロクマルプラス」の商品が発売されました。
ずっと座りたくなる理由
フレームチェアは長く使い続けることができるという機能性はもちろんですが、店頭で接客をする際に多くの方がその座り心地の良さに驚かれます。一度座ってしまうと立ち上がりたくなくなってしまうほど。その理由はクッションの構造にありました。座面のクッションは羽毛とウレタンフォームが積層されており、座った時の底付き感がありません。背クッションは羽毛の周りに綿が巻かれており、柔らかさを最大限に感じられます。2022年の1月には背クッションの羽毛クッションの充填量が更に高くなり、これまでと比べてヘタリにくくなりました。
お気に入りのポイント
見た目と座り心地に一目惚れし、3シーターを購入。部屋に配置してみて、圧迫感の出にくさに改めて驚かされました。普通に座った時の包み込まれるような座り心地はもちろん、横になったときも快適に過ごせます。唯一の欠点は背面クッションがペシャンコになってしまうことだったのですが、現行品はフェザーの量が増量されたということで、店頭にある展示品を試してみたら自分の家にあるものとの違いに驚愕。背中の当たりは格段に良くなっています。正直、背面クッションのこともあり、人にこのソファを勧めるのは少しためらっていたのですが、現行品でしたら自信を持ってオススメできます!(私もタイミングを見てクッションだけ買い換えようと思っています笑)(松井俊太郎/D&DEPARTMENT USEDバイヤー)
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