スタッフの商品日記 087 ニーチェアエックス80

食事や仕事、くつろぐ時も使える折りたたみ椅子「ニーチェアエックス80」

ニーチェアエックス80(以下、エックス80)が復刻発売すると聞き、スタッフ数名で初めてエックス80を見た際にみんなで驚いたのは、折りたたまれた状態から広げるときの動きでした。折りたたまれた状態では椅子の完成形を想像することができず、広げる際に戸惑ってしまいましたが、背の左右のフレームを交互に外側にむけて広げる動きは今までの折りたたみ椅子では見たことのない動きで、約40年前から販売されていた椅子とは思えない新しさを感じました。

またエックス80に座ると、リラックスチェアとしてのニーチェアエックスの魅力となる包み込まれるような座り心地もありつつ、足の裏がしっかりと床に着き、お尻の位置も低くなりすぎないため、食事もでき、立ち上がりも楽。エックス80は、ニーチェアエックスやロッキングの良い所を継承しつつ、移動が楽にできるイージーチェアとして食事や仕事、くつろぎの時間にと、1脚でダイニングチェアからソファの役割まで幅広く使える椅子です。

(エックス80と高さ60cmのLAUAN TABLE SQUARE・05

エックス80は、折りたたんだ際に他の2種と比べてコンパクトなのも魅力のひとつ。座らない時は折りたたんで収納して、来客用の椅子に、アウトドア用に、など使う人の生活に合わせて使えます。(写真左から、エックス、ロッキング、エックス80をたたんだところ)

 

誕生と特徴

まだ人間工学という考えが一般的ではなかった時代に、理にかなった構造を生み出した家具デザイナーの新居猛(にい たけし)氏元となるニーチェアエックス開発時には、素材の特徴を認識し最良なものを得られるようにと新居氏自身の足や身体を使いながら、身体をすっぽりと包んで快適な張りもあるキャンパス生地を開発。交差する脚は、座って体重をかける事で十分に開きしっかりと安定するというように座る人の身体と家具の実質的な関わりを考えた設計となっています。1970年ニーチェアエックス発売後も改良を重ね、ニーチェアヤングなど次々と新しいニーチェアを開発。1989年の東京国際家具見本市の世界中から折りたたみ家具を集めた「フォールディング・ファニチュア展」の新居氏のコーナーでは、折りたたみ椅子が21脚も並んだそう。新居氏が折りたたみ椅子を生涯のテーマとし、ニーチェアエックスの発売から10年後の1980年に誕生したのがニーチェアエックス80。畳が一般的だった床座の暮らしから、椅子を使う暮らしが広がっていく時代の変化に応えるために開発されました。(写真左から、エックス、ロッキング、エックス80)

 

つづく仲間と技術

ニーチェアエックスとロッキングは、1970年の発売依頼、徳島の有限会社ニーファニチアで作り続けていましたが、2013年に製造中止となりました。その後、発売当初から、販売を担当してきた株式会社藤栄が製造・販売を引き継いでいます。

今回のニーチェアエックス80の復刻を藤栄の担当・加藤勉さんにお話しを聞くと、「エックス80を改めて見て、座ったときに日常で様々な行動制限を余儀なくされる昨今において座り心地よく、よりコンパクトで用途が広いエックス80は、よりフレキシブルに生活する役立つだろう、立ちたい!」という思いがあったそう。

「エックス80を、30~40年愛用されてきた方々から、交換用シートや修理のお問い合わせもあったことも、復刻をするきっかけとなりました。その際に苦労したのはエックス同様、エックス80も図面などが残っておらず苦労しました。愛用されている方にエックス80の現物をお借りしたり、旧工場を訪問してデッドストックの部品を集め組み直すところから始めたんです。ネジなどの部品も特注品が多く、それらを採寸して、図面を引き直しています。旧工場では、金属加工も組み立てもハンドメイドに近いやり方でしたが、現在はある程度のライン生産になるため、微妙な調整が難しく、図面通りに部品をつくってもいざ組立となったときに、どういうわけか組み立てられない、ということもあって苦労を重ねての復刻となりました。帆布や木部は、エックス、ロッキングと同じ材を使っており、より長く楽に座ってもらえるような工夫をしています。」と加藤さん「スタッフの商品日記 036 ニーチェアエックス」はこちらから

 

お気に入りのポイント
僕が思うニーチェアの最大のポイントは『人の体のことを考えた居心地、それを移動して持ち運んで使える』ことです。椅子はあまりあっちこっちと移動して使うことはありませんよね。例えば、マルニ60オークフレームチェアの座り心地は最高だと思いますが、ベランダやアウトドアに持ち出すことはなかなかしません(僕はたまにやりますが・・・・笑)。ニーチェアは室内家具でもあり、アウトドアにも持ち出せます。軽くて折りたたみができる。アウトドアの椅子の「簡易性」からの、背もたれが直角で、『座れればいい』という感じではなくて、室内のくつろぎの居心地が移動して使える。もちろん、部屋から部屋への移動もありますが、部屋からベランダへ、部屋からキャンプ場へと、座り心地を移動できます。さて、そんなニーチェアから80が登場します。この椅子の僕のポイントはお尻の収まり具合です。簡単に言うと『机とセットにしても使える』背筋をまっすぐにした用途にも使え、読書にも使える。近い椅子で例えると、マルニ60 オークフレームチェアではなく、カリモク60 Kチェアのような、机を意識できること。ニーチェアXは完全に机から解放されてくつろぐスタイルですが、エックス80は読書、仕事の椅子としても使えます。そのポイントはお尻!! 笑。ニーチェアのお家芸、人のお尻やももの下、膝下などを本当によく考えています。長時間座っていても、どこかが圧迫されて辛くなることはありません。これぞ、一生モノ。大切な人の分を揃えて、車に積み込んで出かけてほしい椅子です。これだけの座り心地があると、据付の椅子たちに嫉妬されそうですが、これからの気軽に場所を指定せず、自由に動き回る時代に最適な「座り心地」を持った椅子と言えます。自信を持っておすすめします。(ナガオカケンメイ/ D&DEPARTMENT ディレクター)