137:vison広島(仮)

どこまで書いていいかわかりませんが、三重にある「vison」の広島版を作ることになり、なんとなくご意見役をアクアイグニス(visonの経営会社)立花社長から指名され、ちょこちょこ広島に通っています。最終的にぼくが納品するものは「リーシングパンフレット」と言い、この施設に入って欲しい、入りたい、興味がある会社や店に渡すパンフレットの作成なのですが、それはつまり全体のコンセプトにも関わり、また、関わる以上、なんだか絵にかいたような偽物にはしたくない。すでに出来上がっている企画書を半ば白紙にして、面白い施設にするにはどうしたらいいか・・・と言うことで、そうじゃないかもしれませんが、総合プロデュースをするつもりで引き受けています。

ぼくは皆さんもどこかで読んで知ってくださっているように「コンセプト」と言うものが嫌いです。もちろん「誰かが、力強く先頭に立ってみんなを引っ張って行く」ようなコンセプトは必要ですし、ないとまとまりません。でも、多くのものは「コンセプト」は建前でその通りにはならず、「まぁ、立てとけ」くらいのものになっていて、正直、最初に出されたこの施設のコンセプトにその偽物感を感じてなりませんでした。例えばそこには「癒しの空間」とありますが、その前に「どうして癒してあげたいか」「なぜ、癒す必要があるのか」がないと、なんとなくそうしたサービスやショップの出店があり、それを「コンセプト通り」と言う人もいますが、そもそもは「何がしたいか」の大きなテーマがあってテナントを集めないと、持続する意味が生まれず、売り上げが下がったら交換されるような施設になってしまう。

こうした楽しいだけの商業施設に何をプラスするか。広島らしい施設であれば、原爆からの世界平和は必須だし、造船技術や広島人気質、極端に言うと「仁義なき戦い」のやくざの物語は広島にはあります。一見触れて欲しくないことも、広島らしさとしてどう意識していくのか。その無理を貫いてこそ、ユニークでリピートしたい施設になっていくと思うのです。

先日、新しくできた「下瀬美術館」(坂茂設計)に行きました。水盤の中に色鮮やかなコンテナのような展示室がありました。後から聞いたのですが「造船の技術を使って水盤の水位を調節してどうみても重そうな展示室を浮かせて移動できる」ようです。例えば「造船のまち、広島」なら、これくらいの気の利いたアイディアがあって欲しい。

ただ話題のテナントを集めたり、有名シェフにお土産スゥイーツを作らせるくらいの話題なら、あっという間に覚めるのと同時に「それくらいの施設」と思われて誰も寄り付かなくなるはずである。最後には芯が見え隠れして、そのテーマの面白さに客の前に「テナント」が集まってくる。そんな広島の施設をどうやって作るのか・・・。