100円ショップでいつか、ロングライフデザインをテーマにものを作ってみたいと思っています。その理屈は「安くてもずっと使い続けられるものはある」です。もっと言うと「デザインは価格ではない」です。こう言うと「良いモノづくりは、値段も高くなる」と言う世界のことを言ってきましたので「なんか、矛盾してないか?」と、言われそうですが、そうではありません。「価格ではない」と言っているのは、良いものは高くなって当然ですが、安いものにも価値あるものはある。いや、安いものにも、ロングライフデザインの考えを持ちせることは出来る、と、思っています。わかりやすくまとめると、「長く使いたい、使えるものは、高価なものが多いけれど、安価なものの世界にも見出せる」ということです。
ロングライフプラスチックプロジェクト(プラマグ)では、5,000円近い高額なプラマグを作りました。メッセージを刻印し、シリアルナンバーを付けて限定販売をしました。このプロジェクトを立ち上げた当初から、「いつか、このプラマグを100円ショップでも展開したい」と、言ってきました。「5,000円で買った人たちは、怒り出さないだろうか」と、周りから意見をもらいました。もちろん、100円の(おそらく100円では逆に作れないので300円くらいになると予想)プラマグにはメッセージの刻印もないし、シリアルナンバーもありません。しかし、僕はこう考えています。「安く買いたい人は、安く買えばいい」。問題は「プラスチック製品も、使う人の気持ち次第で一生ものになり得る」と言う価値観をみんなで考えるプロジェクトプロダクトであるということ。僕は5,000円のものも買うけれど、300円のものも買う。その社会状況を一段高い(意識の)ところから見守る人は確実にいると思っています。なので、5,000円のものを300円で売っても、その意図を理解してもらえば、怒られない(笑)と、思っています。
100円ショップに来る人の大半は「安く買える」ことに価値を感じてきます。そこに「付加価値」を付けていく。100円なんですが、ロングライフデザインなんですと、一生使えることを訴求してみたいのです。社会の問題は「安いものは、価値がない」とされているところで、これは「プラスチック製品は環境に悪い」という価値観と似ています。つまり、「そうかもしれないけれど、そうじゃないかもしれない」と、100円と5,000円の「同じデザインの」ものを使って、社会に投げかけたいのです。
もはや100円ショップで売られているものも、さほど品質に問題なく、ずっと使い続けられます。僕の家の大根おろしは、100円ですが、もう30年は現役。どこで買ったとか、誰が作ったとか、メーカーはどこか、とかは、全くわかりません。気軽に間に合わせのように買ったものが、意外とロングライフデザインだったということです。そこに「どこで買おうと、長く使おう」という意識をちょっと足してみると、ものの見方が変わっていくと思います。
と、いうことで、もしかしたらどこかの100円ショップの中に「ロングライフデザインプロジェクト」コーナーが現れるかもしれません。