レポート(2)二戸食材を巡る生産者訪問

2018年に『d design travel IWATE』を発行し、2019年7月には浄法寺漆のふるさと「二戸」を巡る「d design travel NINOHEスペシャルツアー」を実施。かねてより、漆器の販売やワークショップで交流のあった滴生舎を中心に、二戸の生産者の方々と交流を深めてきました。

この度、岩手県の道具や食材にこだわり、素材を活かした料理で地域の魅力を伝えてきた「ロレオール田野畑」の伊藤勝康シェフをお迎えして、浄法寺の漆器と二戸の食材を使ったスペシャルディナーを開催することに。二戸の生産者を訪問する伊藤シェフに、私たちも同行させていただきました。

荒谷果樹園「りんご」

まずは、旬を迎えたりんごを生産する「荒谷果樹園」へ。

10月下旬、果樹園ではりんごがたわわに実っていました。

「荒谷果樹園」の荒谷直大さんは、祖父の代から引き継いだ果樹園や、耕作放棄された土地を譲り受け、土壌の力を活かした方法で、季節ごとに様々な果樹を栽培しています。その場でもいだりんごを試食させていただきました。

果肉まで赤い「紅の夢」。酸味が強く、しゃくしゃくとしています。

他にも「ローズパール」や「フジ」など、たくさんのりんごを試食させていただきましたが、伊藤シェフのお気に入りは「高徳」でした。

蜜がたっぷり入っていますが、甘すぎずさわやかで香り高い。今回の食事会で使わせていただくことになりました。

上野剛司さん「雑穀」

次に向かったのは、雑穀を生産する上野剛司さんの圃場。10月とはいえ、山の奥にあるので風は冷たく、収穫時期を迎えたソバやアワの収穫で忙しくされていました。

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山あいの地域で米の収量が見込めないため、かつては雑穀の生産が盛んで、雑穀を使う料理も多くある二戸ですが、近年雑穀の生産者は減少傾向にあるといいます。上野さんは「これはもう意地ですよ」と笑いながら、だからこそ生産を続けたいと、たくましく話して下さいました。

伊藤シェフは「雑穀こそ、この土地から失われてはいけない食文化」だと言います。栄養価も高くて何より美味しい。そして、その土地で作り継がれてきた理由がある。今回の食事会で雑穀の魅力を体感し、自宅でも使ってみたいと思うきっかけになればと、いくつかの種類を使わせていただくことになりました。

産直キッチンガーデン「旬の野菜」

最後に向かったのは、産直キッチンガーデン。二戸でつくられた野菜や餅が購入できる直売所です。

ここでは、農家の藤本茂吉さんにお話を伺いながら、当日に調達できる旬の野菜を確認しました。

二戸の土で育った長ねぎ、にんじん、玉ねぎなどの、立派な根菜類のほかに、伊藤シェフが目を付けたのは、藤本さんのつくるポップコーン用のトウモロコシ。これも雑穀のひとつです。当日のアミューズとして使えないかと、構想を膨らませていきます。

すると、本年7月のツアーでもお世話になった三浦静子さんが「おやつができましたよー」と声をかけてくださいました。厨房スペースに入ると、地元のそば粉で打ったそばとおこわのおにぎりを用意してくれていました。

薬味に、シャキシャキのねぎと生わさびも。「前回来た時に食べさせてあげられなかったけど、今ちょうどおいしい時期だから」と、三浦さんのご好意に甘えて、お腹いっぱいいただきました。二戸の食文化に、やはり雑穀は欠かせない存在なのだと再認識させてもらい、そば粉も使うことになりました。

二戸の生産者の方々をめぐり、実際に食材に触れ、土地に根ざした食文化を体感したことで、料理のイメージが膨らんだと、伊藤シェフが話してくださいました。あらかじめメニューを決めずにいきたいということで、私たちもわくわくしながら、当日に向けて準備を進めました。