茨城県央定食を作る旅 ⑵ ひたちなか市・那珂市編

「田畑も原野も土肥え、海山の利ありて…海山川野の豊かな地である。」(常陸国風土記)

奈良時代に編纂された『常陸国風土記』で「常世国(とこよのくに)と呼ばれていた、茨城。海と山と川に囲まれて平地が多く、田畑の耕作もしやすかったため、どの地域で暮らしていても、食べ物に困ることは少なかったといいます。

今回d47食堂では、県都の水戸市を中心とする9市町村から成る「茨城県央地域」の豊かさを感じられるような定食を作るため、秋のはじめ頃に現地を訪れました。

 

ひたちなか市~感動のほしいもを届ける「オカベファーム」

茨城県の特産品として納豆はすぐに名前が挙がるかもしれませんが、実はほしいもづくりも盛んで、生産量は全国で9割を占めています。2日間の限られた日程でしたが、3軒の農家さんを訪れることができました。ほしいもづくりが特に盛んなひたちなか市では、はじめに「オカベファーム」へお伺いしました。

お伺いした9月の中頃は、ちょうどサツマイモの収穫時期。耕運機掘り起こされたサツマイモが転がる畑に案内して頂きました。

岡部さんの畑がある鳥ヶ台周辺は、100年以上前からほしいもを生産している地域です。近年は気候の変化もあり、北海道でもサツマイモが栽培されるようになりましたが、かつてはこの地が北限だったといいます。ここでは、火山灰を含んだボロボロとした黒い土と海からの潮風のおかげで、サツマイモが柔らかく育つそうです。

収穫したサツマイモは少し寝かせて糖度を高めます。腐らないよう低すぎず、萌芽しないよう高すぎず、というのが基本だそうですが、オカベファームでは、甘みを高める環境を研究し、独自の方法で保管しています。サツマイモの糖度が17度になって初めて、ほしいもへと加工されるそうです。

ほしいもの味わいは地域性や気候はもちろんですが、品種や干し方にも大きく左右されます。品種では、もっとも多い「紅はるか」や「玉豊」のほか「いずみ」「兼六」「安納芋」など、水分が多く適度に大きさと形のあるものが好まれます。干し方は、スライスした「平干し」、丸のまま皮を剥いた「丸干し」、スティック状にカットされた「角干し」など、用途や好みによって違いがあります。

オカベファームさんは「紅はるか」という品種にこだわって栽培し、スライスした「平干し」と「丸干し」を販売しています。現地で「丸干し」を頂くと、まったりとした濃厚な甘さと重みのある食感に、「ほしいもって、こんなにおいしかったっけ!?」と、みんなで感動してしまいました。

 

ひたちなか市~丁寧な仕事が美味しいほしいもをつくる「幸田商店」

ひたちなか市では、サツマイモの栽培から加工、販売まで一貫して行う「幸田商店」にもお伺いして、ほしいもへの加工工程を見学させて頂きました。

寒い冬を耐えて甘みの増したサツマイモを蒸し、手作業で皮をむいていきます。専用の器具で大きさに合わせて平や角にカットした後、一枚一枚丁寧に並べ、数日間天日で干します。

ほしいもを干している工場の屋上へ案内して頂いたのは夕暮れ時。心地良い秋の風に吹かれ眼下に広がる田畑を眺めることができました。


那珂市~ほしいもの奥深さを知る「芋助」~

内陸に位置する那珂市では「芋助」にお伺いしました。土質や乾燥具合など、海に近いひたちなか市とは違う自然環境です。オカベファームでも頂いた「紅はるか」ですが、芋助では同じ品種を使って「粉吹き」と呼ばれるものを見つけました。

冷蔵保存により、サツマイモの糖分が表面に出てきて白い粉を吹かせるのです。おかげで、甘みは優しく歯ごたえはサクリとして、まるでスイーツのようでした。

同じ品種のサツマイモを使っていても、保存方法、干し方、切り方で、ここまで味わいの幅が広がるのかと、ほしいもの奥深さを感じました。

現地で出会って感動したほしいもの奥深さ。単品でもご注文いただけますので、ぜひ食堂で味わってください。

つづきはこちら

 

茨城県央定食

※右下から時計回りに。

○ けんちん汁
県央地域の農家さんから届いた根菜と舞茸のけんちん汁。
○ 「吉田屋」の梅干し
茨城県産の梅「石川一号」を塩だけで漬けた無添加梅干し。
○ ほしいも3種食べ比べ
「紅はるか」の丸干しと平干し、「玉豊」の平干し。
○ カナガシラの丸干し(水揚げ状況に応じた地魚が届きます)
那珂湊で水揚げされた地魚。丸干しでふっくらと旨味が凝縮。
○ つと豆腐
豆腐を藁に詰めてから甘辛く煮る、茨城町に伝わる郷土食。
○ レッドポアローの甘酢漬
城里町の伝統野菜、赤ネギを甘酢漬けに。
○ 「だるま食品」のわら納豆
茨城産大豆を藁で包んで発酵させた、濃厚な味わいの納豆。

〈提供期間〉
会期 2019年11月13日(水) - 2019年12月10日(火)
場所 d47食堂(渋谷ヒカリエ8F)
価格 1,750円(税込)

 

茨城県央定食を作る旅

現地取材レポート
>> 茨城県央定食を作る旅 ⑴ 城里町・笠間市・茨城町編
>> 茨城県央定食を作る旅 ⑵ ひたちなか市・那珂市編
>> 茨城県央定食を作る旅 ⑶ ひたちなか市・水戸市・東海村編

 

茨城県央を味わう食の旅」2020年1月25日(土)日帰り

茨城県の中央部に位置し、県都水戸市を含む9市町村からなる茨城県央地域は、海と山と肥沃な大地のある、豊かな自然に恵まれた食の宝庫。旬の地魚やほしいも、わらつと納豆など、それぞれの土地で気候や土壌を活かした、特色豊かな食文化を味わうことができます。今回のスペシャルツアーでは漁場から納豆、ほしいも産地まで、その土地らしさを感じる食と風土、文化を楽しみながら、d47食堂の料理人が「茨城県央定食」を開発するために巡った旅を追体験。茨城県央地域に息づく食文化を学び、味わい、体験する、茨城県央の魅力を濃縮したフードツーリズムに、一緒に出かけてみませんか?

開催レポート
>> “その土地らしさ”の魅力を辿る、茨城県央を味わう食の旅に行ってきました。〈 海の恵み編 〉
>> “その土地らしさ”の魅力を辿る、茨城県央を味わう食の旅に行ってきました。〈 土の恵み編 〉
>> “その土地らしさ”の魅力を辿る、茨城県央を味わう食の旅に行ってきました。〈 つくり手編 〉

主催:いばらき県央地域観光協議会
監修・ツアー催行:D&DEPARTMENT