7月13日(土)14日(日)に行われた「d design travel IWATE スペシャルツアー」に、d47食堂とdたべる研究所が共同参加しました。浄法寺漆のふるさと、岩手県二戸市の暮らしのなかで育まれた食文化をまなび、滴生舎にて、地元の生産者と参加者のみなさんで食卓を囲む「d食堂」をポップアップでオープン。『d食堂 in 二戸』と題し、3本立てのフォトレポートをお届けします。
まずは、地元のお母さんたちから郷土料理を学ぶため、いぶきの里へ向かいました。講師を務めてくださったのは、農家の三浦静子さんと小野知子さん。お二人は、二戸に伝わる郷土料理を継承する「食の匠」として、長く活動されています。いまも地元でよくたべられている、柳ばっととへっちょこ団子のつくり方を教えて頂きました。
隣の産直キッチンガーデンで働いている小田島さんがご用意くださったレシピ。
二戸は山あいのため田んぼよりも畑が多く、米は収量が少ないため特別な日だけ食べられるご馳走で、ひえやたかきびなどの雑穀を常食としていました。柳ばっとはそばを使ったお団子で、野菜たっぷりの汁のなかに落として煮込んでたべます。
江戸時代、農民が蕎麦を食すことを禁止されていたときに、どうにかそばを食べたい!と、お偉い方に見つかっても「これは柳葉というものです!」とウソをつけるよう、柳の形のお団子をつくったという謂れがあります。
こちらは、へっちょこ団子です。別の雑穀でつくる場合もあるそうですが、基本的にはたかきびの粉を使います。おやつとして、ちょっと特別な日につくるそうです。豆も栽培も盛んなので、あずきの汁に入れるのが通例ですが、この日は少し暑かったので、冷やして頂きました。
「へっちょこ」という可愛い名前は、秋の農作業を終えた庭じまいとして、手伝ってくれたひとを労い振舞っていたことから「(ごくろうさまの意で)苦労」を意味する「へっちょこ」という方言に由来するそうです。中央のくぼみから「へそ」にちなんだ、という説もあります。
煮えると次々に浮き上がってくる姿から「うきうき団子」と呼ぶ地域もあるそうです。いずれにしても、可愛いですね。
あずき汁をつくってくださったのは小野知子さん。キッチンガーデンでも販売している草餅をご自宅で毎日つくられているあんこ職人です。おいしいあずきの秘密はガス釜を使っているからだと、こっそり教えてくださいました。
あずきの汁、つぶれ具合がたまらなくおいしかったです。小野さんの草餅は、二戸に行かれる方にぜひ試して頂きたい一品です。
お二人にお話を伺いながら、参加者のみなさんも手を動かしていきます。
自分たちでつくった柳ばっととへっちょこ団子で、おひるごはんを頂きました。
二戸では、お客さんが来るときは地域のひとで寄り合って食事を用意するそうで、「慣れっこだから、大丈夫」と、わたしたちが到着する前に、ほかの二戸の郷土料理も用意して下さっていました。
「煮しめ」は、内陸だけでなく沿岸部でもよくつくられる、岩手の食卓に欠かせない一品です。地域によって食材は異なり、フキやヒメタケは山あいならでは。春に塩漬けしておいたものを塩抜きして使ってくださいました。端っこに顔を出している煮干しについて、「出汁をとったまんま。取り出してもいいんだけど、そのまま入れておいた」と、小野さんが教えて下さいました。
鮮やかな緑色は山菜の「みず」です。さっと湯がいたシンプルなお料理ですが、三浦さんがこの日のために山で取ってきてくれました。しゃくしゃくと不思議な食感がします。
ツアー前に三浦さんから「白米はうまく炊けるか賭けになるけど、おこわなら失敗がないから、おこわでもいいかな?」と相談を頂きました。昔は、どの家庭でも田んぼの端っこで自家用のもち米を育てていたそうで、出荷しないといけないうるち米よりも、たべる機会が多かったそうです。
おこわの具は、三浦さんが自家用に育て乾燥後に冷凍しておいた舞茸。山の半日陰の場所できのこの成長を見守るのが楽しいんだと、嬉しそうに教えてくださいました。たかきびのぷちぷちの食感がたまりませんでした。黒千石大豆や青豆を入れたり、季節によってさまざまに具を変えるそうです。
間引きした小さめきゅうりの漬物やとれたてのプチトマトをかじりながら、窓の外に広がる田園風景を見て、お母さんたちのお料理をたべていると「こんなところで子供時代を過ごしたかったなー」なんて声も聞こえてきました。
>>?産直キッチンガーデン
https://k-garden.amebaownd.com/pages/1466564/page_201712011443
今回お世話になったキッチンガーデンでは、季節の野菜などを届けてくれる宅配サービスも行っています。お母さんたちのつくる漬物やおやつも入れてくださるそうです。みなさんの笑顔が見えるホームページだけでも、ぜひご覧ください。
つぎへつづく。
>> 7月13日(夜)漆バー
宿泊先のおぼない旅館のロビーをお借りして、漆器で地酒をいただきました。
>> 7月14日(昼)d食堂
滴生舎で地元食材をふんだんに使った料理をご用意。生産者と参加者のみなさんで食卓を囲みました。