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染めて着つづける d&RE WEAR 服の染め替え、体験しました
シミや色あせなどで着られなくなってしまったお気に入りの服を、再びアイテムとして蘇らせるプロジェクト「d&RE WEAR(ディ アンド リウェア)」。
「まだ着られる服の大量廃棄」という社会問題に対し、楽しく取り組めることとして、2014年から服の「染め直し」を提案しています。今回、D&DEPARTMENT の活動にかかわってくださっている方々に、「d&RE WEAR」を体験いただきました。
デッドストック生地のロングシャツ
江口宏志[蒸留家/mitosaya薬草園蒸留所]
「自然からの小さな発見を形にする」という考えのもと、千葉県内にある元薬草園で、自ら栽培する果樹や薬草・ハーブなどを使い、発酵や蒸留の技術でものづくりをする。園内の見学、新製品のテイスティングができるオープンデーを不定期で開催。
https://mitosaya.com
ブックショップオーナーから蒸留家に転身した江口宏志さん。2017年より、広大な元薬草園を拠点にして、園内に育つ多彩な植物と、近隣の農家や国内で収穫される果物や野菜などを使って、オー・ド・ヴィー(蒸留酒)をつくっています。
今回、江口さんが染め直しに出した服は、旧東ドイツ時代のデッドストック生地でつくられたロングシャツ。「5年くらい前にベルリンで、デザイナーのアトリエを訪問したときに買ったんです。最初は外出用で、しばらくたってからは、普段着として着ていました。胸元には焚き火のときに飛んだ火の粉でできた穴もあるんですよ」(*)。
d&RE WEARは、参加者の服をまとめて染めるため、服の預かりから返却までに4か月ほどかかります。「返却までのスパンが長いことは、少し気になりました(笑)。でも、染め上がったシャツは鮮やかで、首元にあった変色も気にならず、また外出用の服として復活できそう。実は僕自身も“染め”に興味をもっていて、お酒をつくった後の果物で染めたらどうなるかなど、いろいろ試しているところ。蒸留酒は無色透明。つくる途中で出る副産物に、けっこう色が残っているんですよ」。mitosaya(ミとサヤ)という蒸留所の名のとおり、実だけでなく、莢(さや)も葉も根も、蒸留で生まれる副産物も活かしきろうとしています。
*染め直しでは、高温で窯を回すため、服に穴やヤブレがあると広がってしまうことがあるのですが、今回のシャツの穴は、フチは焼き切れていたため、大きくなりませんでした。
いりこの製造時に着ているエプロン、
出張販売のときに着ていくお気に入りのシャツ
山下加奈代[いりこ製造/やまくに]
創業130年以上の「やまくに」は、瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)で獲れる良質な片口イワシを、手選(よ)りのでいりこ・ちりめんに加工。ワークショップなどを通じて、いりこの魅力も発信している。d47食堂では定期的に「香川定食 やまくにのいりこうどん」をご紹介。
https://paripari-irico.jp
「いりこ」は、片口イワシを煮て乾燥させたもの。東日本では「煮干し」とも呼ばれます。山下加奈代さんが代表をつとめる「やまくに」のいりこは、子どもからプロの料理家にまで、美味しいと言われる味。山下さん一家のいりこを選別する確かな目と手で作られています。
今回、山下さんが染め替えた服は、自分とお母さんのエプロン、そしてお父さんがここ一番というときに着ていたシャツ。どれも家族で気に入っているAIR ROOM PRODUCTSのもの。「白シャツには淡い黄ばみが、エプロンには、いりこの粉や製造機械の操作で付いたヨゴレがうっすら残り、洗濯では取れなくなっていました。食品を扱っていますし、変色が見えるものは着たくなくて。でも気に入っていたから、ずっとしまってあったんです」。
モノトーンの服が多い山下さん家族にとって、2022年限定色「ピーコックブルー」への染め替えは、ちょっと冒険だったそうです。「染め替えたら華やかになり、気分も変わりました。やってよかったです。ピーコックブルーは、意外といろいろな色の服に合いました」。
いりこは出し殻にも栄養があり、山下さんは料理に出し殻が使えることをお客さんにお伝えしています。また、つくる工程で割れたいりこの破片は加工して食品に、取り除いたハラワタも肥料として使っています。「汚れたら捨てる」ではなく、染め直して長く着ることは、「やまくに」のものづくりの考えとも合っている、と山下さんは考えています。
家族全員で使っていた、トロント土産のトートバッグ
持永かおり[金継ぎ/モノ継ぎ]
多摩美術大学で陶芸とガラス工芸を学ぶ。美術品や花器の修理・修復を 20 年以上経験した後、2011 年の震災を期に、自宅でワレモノ修理プロジェクト「モノ継ぎ」 を立ち上げる。『繕うワザを磨く 金継ぎ 上達レッスン』(メイツ出版) を監修。
https://www.monotsugi.com
陶磁器やガラス製品の修理の技をもつ持永かおりさん。持永さんは、D&DEPARTMENT TOKYOで2014年から、金継ぎの受付を開催してくださり、人気のイベントになっています。
「d&RE WEAR」は早い時期から知っていたと持永さん。最初は「服に対して意識の高い人や、特別な服のためにやること」と漠然と感じていたそうです。ところが、知人が気軽に日常の服を「d&RE WEAR」で染め替えていると知り、数年前に初めて申し込みました。「生成りのパンツを紺に染め替えました。白はヨゴレが気になりあまり着ていなかったのですが、紺に染め替えたとたん、毎日のように着はじめたんです」。以降、普段着や作業着を中心に、エプロン、シャツなど、いろいろな服を「d&RE WEAR」で染め替えています。
今回、ピーコックブルーに染め替えたトートバッグは、トロント土産のお気に入りで、この数年、常に玄関に置き、家族全員で使っていたもの。「使い込んだ雰囲気のまま、より素敵になって帰ってきました。洗濯で取れなかった飲み物のシミもすっかり目立たなくなって。文字のプリントがちゃんと残るか少し心配でしたが、大丈夫でしたね」。
金継ぎと染め替えの共通点も教えてくれました。「毎日使いたい器、手に馴染んだ器、そして、その器があることで生まれる日々の景色は、とても貴重なもの。金継ぎは、そんな器の寿命を伸ばします。服の染め替えも同じで、自分に馴染んだ服の寿命を伸ばしてくれるんだと思います」。
10年以上愛用している、黄緑色のパンツ
木下宝[ガラス作家/Simpleglass.]
日用の器として使いやすい「シンプルグラス」と、使い終わったワインボトル類から新たな形を生みだす「ボトルオリジン」などを制作。富山を拠点に活動。D&DEPARTMENT TOYAMA、D&DESIGNでも展示販売会を開催。
https://t-simpleglass.com
パイプから息を吹き入れる「宙吹き」の手法でガラス作品をつくる木下宝さん。2011年から取り組む「ボトルオリジン」は、使い終わったワインボトルやビール瓶を1,000度以上に熱し、花器やピッチャー、ゴブレットなど、新しい形にするシリーズ。空き瓶はほぼリサイクルできるようになっていますが、「ボトルオリジン」は、数あるリサイクルの新たな方法として、個人のガラス作家にできることを試みています。
そんな木下さんに、今回はじめて「d&RE WEAR」を体験いただきました。富山から送っていただいた服は全部で4着。シミのある服もあり、どれも10年以上、木下さんが大切に着つづけていた服。まずはピーコックブルーに染め替えたパンツを、木下さんに見てもらいました。もともとの生地の色は、くすんだ黄緑色。染め替えでは、すでに繊維に色が入っている上から、ピーコックブルーの染料を入れるので、元の生地の色の影響を受けて、すこし黄みがかった仕上がりに。
「思ったとおりの色になりました。元の服の黄緑色も感じられますし、面白いです。しっとり落ち着いた色になりましたね。元の生地にあったゴワゴワ感が落ち着き、なめらかになった印象です。自分で染め替えようと思っても大変だから、定期的な染め替えの機会があることはよいですね」。
※写真はイメージです。撮影状況や光の当たり具合、ご覧になる環境(PCのモニタやスマホの画面)などにより、色合いが異なって見える場合があります。写真と実物では色や風合いが若干異なる場合がございますのでご了承ください。