手ぬぐいは、持ち歩きやすく乾きが早いことから、昔から暮らしに欠かせないものでした。現在もハンカチのように使うほか、包む、巻く、敷く、飾る、などさまざまな使い方で、幅広い年代の方に親しまれています。
「にじゆら」の手ぬぐいは、明治時代に大阪で生まれた、生地に染料を「注」いで柄を「染」める注染(ちゅうせん)技法を使ったもの。柄に合わせて糊置きしながら、25mほどの長い布をじゃばら状に重ね、表からと裏からの二度染めるので、裏表なくきれいに染まるのが特徴です。美しい「ぼかし」や「にじみ」は、全工程が職人の手作業だからできること。素材は上質な浴衣にも使われる「さらし」で、肌あたりが良く、使うほどに柔らかくなり風合いが増します。
注染手ぬぐいのブランド「にじゆら」を手掛けるナカニは、手ぬぐいや浴衣の染色加工の工場として1966年に創業。ナカニの工場がある大阪府堺市毛穴(けな)町は、木綿産地として栄え、木綿産業から発生した和晒(わさらし)産業も発展しました。和晒は圧力をかけずにゆっくり蒸してつくるので繊維が潰れません。そのため染料が生地の糸の間をよく通ることから注染に向いており、染め工場も和晒産業とともに発展していった歴史があります。
ナカニは長年、注染に携わる中で、手ぬぐいの需要が減りつつあることに危機感を感じて「にじゆら」を設立し、日本ならではの手ぬぐいを残し、注染の魅力や個性を伝える活動に力を入れています。
今回は、大阪府堺市の注染手ぬぐい「にじゆら」と合わせて、大漁旗などを手掛ける鹿児島県いちき串木野市「亀崎染工」がつくる手捺染の手ぬぐいもご紹介いたします。
大阪・鹿児島、それぞれの地域の自然環境によって育まれた日本伝統の染め技法「注染」、「捺染」の歴史や技術・個性を知り、手ぬぐいのある生活を始めてみるきっかけになれば幸いです。
※好評につき、会期延長しました。9/3(火)→ 9/17(火)迄